成功する日本企業には「共通の本質」がある…菊澤研宗著 朝日新聞出版

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成功する日本企業には「共通の本質」がある

『成功する日本企業には「共通の本質」がある』

著者
菊澤研宗 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784023317703
発売日
2019/03/27
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

成功する日本企業には「共通の本質」がある…菊澤研宗著 朝日新聞出版

[レビュアー] 篠田英朗(東京外国語大学教授)

 題名からは、日本企業の活躍を紹介する本であるかのような印象を受ける。だが、副題の「ダイナミック・ケイパビリティの経営学」が、本書の内容をよく言い表している。著者は経営学の研究者である。「変化対応的な自己変革能力」を意味する「ダイナミック・ケイパビリティ」を提唱する米国の経営学教授の下で研究を進めた。そのため本書のかなりの部分が、経営学の理論動向の紹介にさかれている。富士フイルム、ソニー・インタラクティブエンタテインメント、YKKなどの日本企業の成功例は、「ダイナミック・ケイパビリティ」の観点から着目すべき事例として取り上げられる。

 逆に、失敗例として参照される日本企業もある。その背景には、個別部門の合理性による全体の非合理、効率性の追求による不正、短期的な合理性による長期的な非合理、などの事情があったという。著者は、このような「組織や人間が合理的に失敗する」現象を「不条理」現象と呼び、克服が必要だと説く。

 バブル崩壊後、多くの日本企業がアメリカ流の「株主主権論」に陥ったことが、日本企業の全般的な低迷の背景にあるという。市場原理を強調するだけの新古典派経済学では、イノベーション(革新)を説明できない。日本の組織文化を生かし切りながら、変化を生み出していく能力が必要だ、というわけである。

 著者によれば、実は日本企業にこそ「ダイナミック・ケイパビリティ」が備わっている。日本企業は変化に強い。しかし残念ながら、著者は日本企業がイノベーションに強い、ということまでは証明していない。ただ、環境に即応して変化していくことができるだけだ。

 多くの企業人が求めているのは、新しい概念ではなく、実際にイノベーションを起こすための方法論だろう。さらに数多くの成功例を参照しながら、より帰納的な議論が発展していくことも期待される。

読売新聞
2019年5月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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