『「非認知能力」の育て方 : 心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育』
- 著者
- Bork, Shigeko
- 出版社
- 小学館
- ISBN
- 9784093886338
- 価格
- 1,540円(税込)
書籍情報:openBD
【自著を語る】子どもが電車で騒いでも何も言えない 親にはどんな「能力」が必要か
[レビュアー] ボーク重子(ICF認定ライフコーチ)
子育てに関する書籍を出させていただいていることもあり、講演やワークショップで多くのママさんたちから質問やご相談を受けます。
最近受けた質問で少し驚くことがありました。
3歳の坊やを持つママさんなのですが、
「子どもと一緒に電車に乗っていて騒がれたとき、叱っていいのかどうかわかりません。人前で叱ると虐待と思われそうで、何も言わずにいてしまいます」
とおっしゃるのです。
ここで私が首をひねったことは2点。
1 しつけを「叱る」ことと誤解しているのでは、ということ。
2 「虐待」と思われる、という発想。
大前提としてお話ししたいのは、子育ての唯一の目的は、子どもが社会で幸せに生きていけるよう導き、送り出すことだということです。ですから、親は子どもに「社会の仕組み」を少しずつ教えていかなくてはいけません。これは、のちの子ども自身のためなのです。
誰もが社会の中で生きていて、世界はみんなが協力し合って回っている。世界は誰か一人のものではない、ということ。その視点に立って、乗車している短い時間をお互いに気遣いながら過ごしている人たちの中で大きな声で騒ぐのは良くないことだよ、と理解させなくてはいけません。
これは「叱る」のとは違います。子どもがまだ知らない「社会の仕組み」を教えていくことなのです。大きな声で叱責する必要もなければ、もちろん手をあげることなどありえません。
「君が騒いだら、お隣で寝ていたおばあちゃんは嬉しいかな? どう思う?」
「もし君が大好きな絵本を読みたいと思ったときに、隣に来た子が今の君みたいに大きな声でずっと騒いでいたら、どう思う?」
こんなふうに問いかけ、親子の対話をします。もちろん、親子の対話を「虐待」と思う人はいません。そして、このような対話は、むしろ子どもの非認知能力を大きく伸ばす機会でもあるのです。
書籍『「非認知能力」の育て方』(小学館)にも書きましたが、IQや学力テストのような数字で表すことができる能力を「認知能力」と呼ぶのに対し、「非認知能力」は、問題を自分で解決する力、やり抜く力、自制心、他者と協力して事を成し遂げる協働力、などのいわば「人間力」のこと。2020年の教育改革でも、非認知能力を育てることが大きなテーマになっています。
数値化できる能力ではAIが軽く人間を超えていく時代において、子どもが幸せな人生を歩んでいくためには、人間にしか持つことができない非認知能力を育てることが重要です。
そのためには、親が「正解」を押し付けるのではなく、子どもが小さな頃から常に「あなたはどう思う?」「なぜそう思うの?」「それは何のため?」と問いかけることが大事。その習慣が、論理的思考の種を生み、自分で考える力を育てるのです。
「何のために子どもとこの話をするのか」をしっかり考えた上で、自信を持ってお子さんと向き合ってください。それはママ自身の非認知能力と笑顔を育てることにつながります。