作ること使うこと 生活技術の歴史・民族学的研究…アンドレ=ジョルジュ・オードリクール著

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作ること 使うこと

『作ること 使うこと』

著者
アンドレ=ジョルジュ・オードリクール [著]/山田慶兒 [訳]
出版社
藤原書店
ジャンル
歴史・地理/歴史総記
ISBN
9784865782127
発売日
2019/02/25
価格
6,050円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

作ること使うこと 生活技術の歴史・民族学的研究…アンドレ=ジョルジュ・オードリクール著

[レビュアー] 藤原辰史(農業史研究者)

 贈与論や身体技法論で有名な人類学者モースの講義を聴き、技術学の構築を目指したフランスの碩学(せきがく)の書物だ。

 著者は、科学的手続きを経て急速に発展する以前の「技術」に焦点を絞る。世界各地の農業、食、服飾、輸送、鋳鉄、動力、火起こし、揚水、音楽などを、人類学、歴史学、言語学等の博識と豊富な手作業の実践知を遺憾なく発揮し、縦横無尽に説明していく。

 人間と環境の交差点である「技術」の、現状ではなく歴史に関心がある私のような人間を除けば、単調な記述の連続にいささか疲れるかもしれない。だが読み進めているうちに、ある不思議な魅力に呪縛され始める。

 例えば、読後すぐ自転車に乗った時、この機械を操っている自分が奇跡のように思えてきた。途端に、通り過ぎていく自動車が犬橇(いぬぞり)の発展形に見えてくる。当たり前だと思ってきた技術がどれほどの試行錯誤の上に生まれたのか。なんだか、四角四面な世界が柔らかく感じられるのだ。

 技術の東西交流史からヨーロッパ近代を相対化していく著者のお手並みも読みどころである。山田慶兒訳。(藤原書店、5500円)

読売新聞
2019年5月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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