僕という容れ物…檀廬影著

レビュー

3
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僕という容れ物

『僕という容れ物』

著者
檀廬影 [著]
出版社
立東舎
ISBN
9784845633487
発売日
2019/04/19
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

僕という容れ物…檀廬影著

[レビュアー] 戌井昭人(作家)

 檀廬影(だんいえかげ)さんの初小説、彼はSIMI LAB(シミラボ)というヒップホップユニットで活動していたラッパーでもある。

 多分、作者を反映しているであろう主人公は、父が黒人で母が日本人、天然のアフロヘアで、マイノリティとして生きる辛(つら)さが書かれている。そして精神世界にどっぷり突入していく描写が重くのしかかる。一方で気張ることのない不良性がサラリと書かれていて、そこに凄(すご)みがあり、同時に清々(すがすが)しさもある。

 主人公がロサンゼルスを旅して過ごした日々が綴(つづ)られている箇所は、陰鬱(いんうつ)な生活をしていた彼が青空を見る瞬間で、読んでいるこちらも得体の知れない感動を覚えた。

 小説は突然、舞台が昭和46年になり、同じような境遇の男の暴走や憤りが書かれている。作者は平成生まれだが、当時の時代感覚が物凄くリアルなのに驚く。

 また言葉に変なテラいがないので、ストレートに響いてくる。小説とは文学的な感覚を練り上げるだけではなく、道端から拾って何かを見つけるものだと改めて思った。とにかくパワーのある作品だ。(立東舎、1600円)

読売新聞
2019年5月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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