イランは本当に北朝鮮と同じぐらい危険な国なのか?

対談・鼎談

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世界地図を読み直す

『世界地図を読み直す』

著者
北岡 伸一 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784106038402
発売日
2019/05/22
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【筆者対談】北岡伸一×池内恵/「大国の周縁」から見た地政学

[文] 新潮社


イランは本当に北朝鮮と同じぐらい危険な国なのか?(※画像はイメージ)

「北朝鮮とイランを同列に置くなんておかしな話」――この度、『世界地図を読み直す:協力と均衡の地政学』(新潮選書)を刊行した北岡伸一・国際協力機構(JICA)理事長と、中東・イスラーム研究者の池内恵・東京大学教授が、中東情勢について対談しました。

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池内 中東では紛争が相次いでいます。JICAの活動は、ある程度情勢が安定している国に限られますが、それ以外の紛争地域への関与については、どのように考えているのでしょうか。

北岡 イラクについて言えば、昨年も、シーア派、スンニ派、クルド人の各勢力の議員を日本に招いて、東京、京都、広島を旅しながら、戦後復興と和解について考えてもらう「知見共有セミナー」を開催しました。三派の議員たちが、数日間にわたり一緒にご飯を食べて、寝泊まりする機会などは基本的にないわけで、日本ならではの国際協力だと思います。


北岡伸一氏

池内 パレスチナ紛争についてはどうでしょうか。

北岡 かつてノルウェーがオスロ合意に貢献したように、日本も何かできればいいとは思います。ただ、私は地域の揉め事は当事者同士が主体的に話し合って解決しないとダメだと考えています。外部から圧力をかけて無理やり決めても上手く行かない。日本が出来るのは「知見共有セミナー」のようなささやかなきっかけ作り。もちろん爆弾テロの一発で成果がふっ飛ぶような話ですが、それでも機が熟せば芽が出るかも知れない。

池内 これまでアメリカは一方で軍事力を使い、もう一方で普遍的価値、つまり人権と民主主義を強く主張することによって、中東に関与して来ました。しかしここに来て「中東疲れ」というか、どうも世界には必ずしも民主主義がそのままでは適用可能ではない地域があるらしいと気づき始めたように思います。

北岡 本書で南スーダン問題について書きましたが、アフリカでは、アメリカ流の大統領制民主主義を押し付けて失敗することが多いのです。アフリカは基本的に部族社会ですから、選挙で大統領を決めたら、常に多数派が勝ち、少数部族が不利益を被る。すると少数派はゲリラ戦に走る。部族社会では議会制民主主義にして、議会で部族間による「妥協の政治」が行われるようにした方がいい。

池内 アメリカは、イランに対してもバランスを欠いているように思います。

北岡 その通りで、北朝鮮とイランを同列に置くなんておかしな話です。アメリカとの関係で言えば、イラン、ミャンマー、キューバの三ヵ国が難しい。日本からすれば、いずれも「まあまあの国」で、そんなに悪い国ではない。あまり性急に民主化を求めても、「アラブの春」と同様、逆効果になる危険性もある。
 今はミャンマーに対する国際社会の批判は厳しいけれど、かつて日本がインドネシアのスカルノ体制の経済開発を支えて結果的に民主化が進んだように、辛抱強く見守っていく必要があると思います。

 ※【筆者対談】北岡伸一×池内恵/「大国の周縁」から見た地政学「波」2019年6月号より

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北岡伸一(きたおか・しんいち)
1948年、奈良県生まれ。東京大学名誉教授。2015年より国際協力機構(JICA)理事長。東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士)。立教大学教授、東京大学教授、国連大使(国連代表部次席代表)、国際大学学長等を歴任。2011年、紫綬褒章受章。著書に『清沢洌』(サントリー学芸賞受賞)、『日米関係のリアリズム』(読売論壇賞受賞)、『自民党』(吉野作造賞受賞)、『国連の政治力学』、『外交的思考』など。

池内恵(いけうち・さとし)
1973年、東京都生まれ。東京大学先端科学技術研究センター教授。東京大学文学部イスラム学科卒業。同大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。著書に『現代アラブの社会思想』(大佛次郎論壇賞)、『書物の運命』(毎日書評賞)、『イスラーム世界の論じ方』(サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(毎日出版文化賞特別賞)、『中東 危機の震源を読む』、『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』『シーア派とスンニ派シーア派とスンニ派』などがある。

新潮社 波
2019年6月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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