見えないからこそ見えた光…岩本光弘著 ユサブル

レビュー

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見えないからこそ見えた光

『見えないからこそ見えた光』

著者
岩本光弘 [著]
出版社
ユサブル
ISBN
9784909249203
発売日
2019/02/08
価格
1,540円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

見えないからこそ見えた光…岩本光弘著 ユサブル

[レビュアー] 橋本五郎(読売新聞社特別編集委員)

 息子さん、ヒロさん、とうとうやりましたね。2月24日、全長12メートルの「ドリームウィーバー号」で米サンディエゴを出航、無寄港で4月20日、福島県小名浜に到着しました。世界初となるブラインドセーラーによる太平洋横断、テレビで到着の模様を見て思わず涙しました。そしてこの快挙の秘訣(ひけつ)はヒロさんの生き方そのものにあったことを今度の本で知りました。

 ヒロさんは先天性弱視で、16歳で全盲になり、自殺を考えるほどの絶望の淵(ふち)に立たされながらも常に前向きでしたね。

 「壁は押しつぶされるためにあるわけではなく、ぶち破るためにあるんだ」

 「あなたがもし……運を引き寄せたいというのであれば口にしている言葉をまずポジティブなものにしてみてください。言葉を変えることで行動が変わり、行動が変わることで習慣が変わり、習慣が変わることで性格が変わり、性格が変わることであなたの運命が変わります」

 ヒロさんはそれを実践しました。22歳で米国に留学、帰国して英語学校に通い、そこで出会った米人女性と結婚、「文部教官」という肩書を捨ててサンディエゴに移住しました。2013年に辛坊治郎さんとの太平洋横断に失敗したあとも決して挑戦をあきらめませんでした。

 ヒロさんには伯父さんや盲学校の先生など多くの支えがありました。「お前の目が見えなくなったのには意味がある。お前がポジティブに生きる姿を見せることで、見えていても何のために生きているのかわからなくなっている人たちに、勇気と希望を与えるんだ」。この伯父さんの言葉はとても重いですね。

 でも私が泣いたのは、これまでのお母さんの辛(つら)さを思ったからです。全盲になったのは自分のせいではないかと長い間自らを責めていたと推察します。でも、ヒロさんが夢を実現、お母さんの肩の荷が少しですが下りたと思い、泣かずにいられませんでした。敬 具

読売新聞
2019年6月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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