ルールメイキング…齋藤貴弘著 学芸出版社

レビュー

3
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ルールメイキング

『ルールメイキング』

著者
齋藤 貴弘 [著]
出版社
学芸出版社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784761527068
発売日
2019/04/26
価格
2,376円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

ルールメイキング…齋藤貴弘著 学芸出版社

[レビュアー] 坂井豊貴(経済学者・慶応大教授)

 1948年に制定された風営法は、当時の価値観のもと、飲食店のみに深夜の営業を認めた。客がフロアで踊るクラブは、この法律の範疇(はんちゅう)とされ、深夜は営業を認められなかった。時代は変われども、制定された法律は効力をもち続ける。2010年には深夜に営業していたクラブが多数摘発され、閉店に追い込まれた。弁護士である著者は、そうした事態を見て、風営法の改正を政治に働きかけはじめる。本書はそのときの「ありえないほど大変」な経験を記録したものだ。

 当時この問題は、インターネットでの情報の拡散を通じて、注目を集めてはいた。だがネット上の声は、それだけでは法改正への影響力にならない。声をいかに影響力へと転化していくか。著者らは、著名人を巻き込み、署名運動を展開し、世論を喚起しながら人的ネットワークを形成していく。

 そして共感層を広げるため、ダンス業界と連携する。このときにはクラブ摘発の問題にこだわらず、ダンス保護の観点を強く打ち出す。また、政治家と連携するときには公益を掲げ、未来の産業を一緒に作っていこうというスタンスを打ち出す。仲間を増やすこと、相手が賛同しやすい理屈を立てることを、著者は重視する。結果を出すために、他者の目線に立って物事を考える姿勢は徹底している。

 それでも事態は思うようには進まない。最初に期待していた議員立法は挫折し、著者の心は一度折れる。しかしそこから、ダンス議連の粘り強い働きにより、事態は展開する。最終的には警察庁と度重なる折衝のすえ、大幅な法改正が実現する。

 法改正までのプロセスは苦難に満ちたもので、著者はもう一度最初から同じことをやるなら、「率直に言って相当悩む」と述懐する。だからこそ、その道のりをまとめた本書の価値は高い。理不尽な法規制にビジネスを阻まれているすべての人が、本書から多くを得るだろう。

読売新聞
2019年5月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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