ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集…斉藤倫・著、高野文子・画

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ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集

『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』

著者
斉藤倫 [著]/高野文子 [イラスト]
出版社
株式会社 福音館書店
ジャンル
文学/日本文学詩歌
ISBN
9784834084573
発売日
2019/04/10
価格
1,320円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集…斉藤倫・著、高野文子・画

[レビュアー] 一青窈(歌手)

 子供の“きみ”といい歳(とし)をしたおっさんである“ぼく”との対話を通して、20編の名詩を実に美しいかたちで紹介してくれるこの詞華集は高野文子さん画の嬉(うれ)しい一冊である。

 沖縄の古い詩を「いみが、わからなすぎて、おんがくみたい」と鮮やかにこたえる“きみ”と萩原朔太郎の詩がこわいと感じるのは「ふだんのことばが、生まれるまえの、なまのげんじつに、むかいあってしまうから」と軽やかに応える“ぼく”。なんて最高の国語のせんせいだ!

 思い返せば息子は私の質問になんでもかんでも「ちべじょんばん!」と答えてきた。「きょうはどれがいちばん美味(おい)しかった?」「お散歩でどんなむしと出会えた?」等々。

 きもちにぴったりハマったのか、頭の中で創った音をことばに変えて、辞書には無い造語を私に渡してくれるのは今も続いている。ことばとことばのすき間にあるような、意味になる前の心の動きをそのまま差し出してくれる。

 それがとても大切な行為で、このおとこそが詩のはじまりだとこの本が後押しして教えてくれた。(福音館書店、1200円)

読売新聞
2019年6月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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