企画が通る・価値が伝わる・支援を得る。アイデア実現への3ステップ

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優れた発想はなぜゴミ箱に捨てられるのか?

『優れた発想はなぜゴミ箱に捨てられるのか?』

著者
岸良 裕司 [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784478107751
発売日
2019/04/05
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

企画が通る・価値が伝わる・支援を得る。アイデア実現への3ステップ

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

優れた発想はなぜゴミ箱に捨てられるのか? 限界を突破するTOCイノベーションプロセス』(岸良裕司著、ダイヤモンド社)で明らかにされているのは、「TOCイノベーションプロセス[E4V(Eyes for Value)]」。

ひとりの天才に依存するのではなく、みんなの知恵を使ってイノベーションを起こしていくというという考え方です。

アイデア発想のみならず、事業化してイノベーションを起こすまで、すべてのプロセスを網羅しているのだとか。

E4Vは以下のようなことを、部門の壁を超え、会社の壁も越えて、みんなで協力して実現していくのだそうです。そのプロセスは次のとおり。

・ 世の中にWOW!と言わせる発想を、組織の壁を超えてみんなで創る

・ 商品で語る中期経営計画を創る

・ 市場のあらゆるステークホルダーが応援する仕組みを創る

・ すべてのDRが、関所ではなく支援を増やす加速ポイントとなる

・ 経営幹部が喜んで支援してくれるようになる

・ 科学者のようにみんなで仮説検証できるようになる

・ 対立を活用してブレークスルーを起こせるようになる

・ 斬新な発想なのに、市場がその価値を高く評価してくれる

・ 相手の立場になってNOと言えない提案を創る

・ イノベーションの実現をかつてないスピードで達成する

(「はじめに」より)

根底にあるのは、全体最適のマネジメント理論TOC(Theory of Constraints:制約理論)を開発したイスラエルの物理学者、エリヤフ・ゴールドラット博士によるベストセラー『ザ・ゴール』。

『ザ・ゴール』を読んだ方ならおわかりだと思うが、TOCは世の中の既成概念を覆すブレークスルー思考そのものである。

この知識体系の粋を集め、世の中にWOW!と言わせるイノベーションを創り出すために開発されたのが、本書で紹介するE4Vだ。(「はじめに」より)

本書冒頭の「TOCイノベーションプロセス『E4V』の全体像」に目を通し、基本的な考え方を確認してみることにしましょう。

3つの前提から構築されたE4V

著者によればTOCイノベーションプロセス「E4V(Eyes for Value)」は、次の3つの前提から構築されたもの。

・ どんなに優れた商品・技術でも、お客様に価値をもたらさなければ、世の中にイノベーションを起こすことはできない

・ どんなに価値ある商品・技術でも、お客様にその価値が伝わらなければ、世の中にイノベーションを起こすことはできない

・ どんなに優れた価値ある商品・技術でお客様にその価値が伝わっていても、多くの人の助けなしには、世の中にイノベーションを起こすことはできない

優れた商品・技術だけでイノベーションが起こせないということは、多くの方の共通認識といえるかもしれません。

優れた商品・技術であったとしても実際にうまくいかないほとんどの理由は、それが必ずしもお客様に価値をもたらしていないから

同じく、たとえ本当は優れた価値があったとしても、その価値を世の中が理解できるとは限らないもの。当然といえば当然の話で、イノベーティブな商品というのはいままで世の中になかったものだから。

つまり必然的に、世の中がその価値をきちんと理解することは難しいわけです。

たとえ優れた価値ある商品・技術で、その価値が世の中に広く伝えられたとしても、それだけでイノベーションが起こせるわけではありません。

イノベーションを起こすには、外部から資金援助を得たり、世の中の既成概念を変えたり、ときには政府の規制にさえチャレンジする必要があり、多くの人や組織の支援が必要になるから。

実際のところ、イノベーションを実現するためには3つの壁があることを著者は指摘しています。それは、①価値を創る、②価値を伝える、③実現への道のりを創るという壁。

そして「価値を創る」壁よりも「価値を伝える」壁はハードルが1ケタ高くなり、さらに「実現への道のりを創る」壁はもう1ケタ高くなるのだといいます。

壁をひとつ乗り越えるたびに必要な資金も増え、難易度も上がり、より多くの人々や組織の支援が必要となっていくものだから。

イノベーションを実現する3つのSTEP

本書で紹介されているTOCイノベーションプロセス「E4V」は、こうした現実を前提としたうえで、次の3つのSTEPによって成功への道のりを進んでいくのだそうです。

ちなみに各STEPは、それぞれの障害をスムースに乗り越え、そのつど支援者を増やしてイノベーションが実現できるように設計されているのだといいます。

STEP1 価値を創る

STEP2 価値を伝える

STEP3 実現への道のりを創る

STEP1「価値を創る」のプロセスで明かされているのは、「顧客の目」「市場の目」「商品の目」の<3つの目>によって新商品の価値を想像していくこと。

そして、まだ世の中にない商品のコンセプトをあたかも既に存在するかのような視点でとらえ、<WOW!カタログ>を創るのだといいます。

さらにこのSTEPでは、商品で語る中期経営計画<WOW!ロードマップ>も創ることに

STEP2「価値を伝える」のプロセスにおいては、その商品を購入するお客様の立場になり、商品コンセプトを<変化の4象限>で見つめなおしていくことを著者は提案しています。

その価値をお客様にどう伝えたらいいかを再考し、<市場の教育>の6つの質問で、まだ世の中にない商品のコンセプトをどうやって広めていくか、具体的な案を創っていくというのです。

そしてSTEP3「実現への道のりを創る」のプロセスで行うのは、その商品がビジネスとして成功するための仮説をつくり、素早く検証する<仮定の検証>。

また、失敗を学びに変える<ミステリー分析>、メンバーの志をひとつにする<ODSC>、成功への道のりを描く<バックキャスト工程表>、ステークホルダーの賛同を得る<断れない提案>などのツールを活用し、みんなの知恵を結集して「WOW!と言わせる提案」を創っていくのだそうです。

本書ではこのようなプロセスを経ることによって、TOCイノベーションプロセス「E4V」を解説しているわけです。しかも魅力的なのは、あらかじめ用意された質問に答えるだけで、すべてのプロセスが実践できるということ。

しかもチームでできるため、「世の中をWOW!と言わせるイノベーションプロセス」を、楽しみながら進められるのです。

優れた発想を無駄にしてしまわないためにも、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史

Source: ダイヤモンド社

メディアジーン lifehacker
2019年6月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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