瀧口政満著 「樹の人 瀧口政満作品集」

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樹の人 瀧口政満作品集

『樹の人 瀧口政満作品集』

著者
瀧口政満 [著]
出版社
北海道新聞社
ISBN
9784894539433
発売日
2019/03/27
価格
3,300円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

瀧口政満著 「樹の人 瀧口政満作品集」

[レビュアー] 藤原辰史(農業史研究者)

 石の彫刻と木の彫刻。石は、硬く、冷たく、滑らか。木は柔らかく、あたたかく、武骨。鮭(さけ)を咥(くわ)えた熊は木彫りで、ダビデ像は大理石以外考えられない――。阿寒湖畔で、アイヌの妻ユリ子に見守られ彫られた瀧口政満の作品は、このような二項対立を見事に崩す。

 寒くて布に覆った体から顔だけ見せる少女たちは敬虔(けいけん)でお茶目。風に舞い上がる少女の髪の毛は重くも軽くも感じられ、樹上の梟(ふくろう)は勇ましいけれども、どこか抜けている。老婆は不思議と艶(あで)やか。どれもざらつく表面なのに爽快な光を帯びる。

 何がこれらの矛盾を統一するのか。瀧口の長女である夕美は、本書所収の文章で、父の「実際家」なところを、その夫の黒川創は何かを想(おも)う人間への眼差(まなざ)しを紹介していて、瀧口作品を読み解く鍵になる。美しい写真と文章が渾然(こんぜん)一体となって阿寒湖の雪と森と水の静けさに読者を誘う。(北海道新聞社、3000円)評・藤原辰史

読売新聞
2019年6月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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