<東北の本棚>愛情注ぎ 生死見つめる
[レビュアー] 河北新報
32年前、著者はひょんなことから野良猫家族と同居することになった。以来、顔ぶれは入れ替わりつつ現在まで十数匹と共に暮らし、生と死を見つめてきた。その折々に書きためた思いをまとめた。
猫との最初の出会いは1987年秋。札幌市で暮らしていた時だった。マンションの隣人が野良猫に餌をやり困っていたが、その猫が子猫を産み、ベランダで子育てを始めた。次第に感情が移り、冬越しのため自室で保護したことから共存生活が始まった。
一時期、著者は猫の世話を知人に頼み、夫の仕事の都合で英国で暮らした。飼い主に放置されている猫が心配で、王立動物虐待防止協会へ調査を依頼し、新たな飼い主が見つかるまでのエピソードも紹介する。
93年に仙台へ越してからも3匹を保護し、避妊手術をして家猫にした。東日本大震災後は飼い主を亡くした猫の保護に尽力、新たに2匹を迎え入れた。「愛情を十分注ぐ、信頼関係を築く、コミュニケーションができる」ことが、動物と関係を持つ基本だという。
8匹をみとり、喪失感も味わった。どうすれば大事な家族である猫に、安らかで落ち着いた最期を迎えさせられるか。哲学サロンを主宰する著者は「人間の終末と共通したところがある」と介護の日々を振り返る。
文芸社03(5369)3060=1080円。