『百年の批評 近代をいかに相続するか』福嶋亮大著
[レビュアー] 産経新聞社
気鋭の批評家が手がけた主に日本文学をめぐる論考やエッセー、書評を収める。文壇内での交友関係や流派に重きを置く批評も多い。著者はそうしたアプローチから離れ〈テクストからテクストへの隠れた遺産相続に注目すること〉で刺激的な日本文学史を描く。
不透明な現実を切り取る「語り方」という点では、ノーベル賞作家の大江健三郎と2000年代に登場した舞城(まいじょう)王太郎にもつながりはある。人間以外の動物に「語り」を委ねようとした平成の女性作家たちの意図も見えてくる。〈作品レベルでの暗黙の対話〉の数々が近代以降の日本文学の富と課題を指し示す。(青土社・2200円+税)