論理+想像力で考える力を磨く。ハーバード・スタンフォード流批判的思考

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論理+想像力で考える力を磨く。ハーバード・スタンフォード流批判的思考

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ハーバード・スタンフォード流 「自分で考える力」が身につく へんな問題』(狩野みき 著、SBクリエイティブ)は、オリジナルな答えを出すための「考える力」をトレーニングするための本。

そう語る著者は、長年、大学等でクリティカル・シンキングを教え、どうすれば学生たちが自分なりの答えを出せるか、という問いと格闘してきたのだそうです。

クリティカル・シンキングは、欧米では「読み書きそろばんに次ぐ第4のスキル」と言われ、この本のまさにベースとなっているものです。

「批判的思考」とも呼ばれますが、その実態は「じっくりと自分の頭で考え、自分なりの答えを出すこと」であり、《論理+想像力》の思考法でもあります。

論理で理路整然と考え、想像力を駆使して考えを深め、自分なりの答えを出す。新しい時代にまさに求められるスキルだと思います。(「はじめに」より)

そして、ここで紹介されている「考える力トレーニング」は、ハーバード大学の教育プロジェクト、スタンフォード大学のクリエイティビティを伸ばすための授業など、海外一流大学のメソッドや、アメリカのハイスクールでもおなじみのクリティカル・シンキングをベースにしたものだそう。

きょうはそのなかから、序章「ウォーミングアップ」に目を向けてみましょう。

論理思考の基本を問う問題

月曜ならばA駅の売店に「本日ポイント2倍」という札が立つ、ということがわかっています。

[問題] さて、正しいのは、次のうちどっち?

1:A駅の売店に「本日ポイント2倍」の札が立っていないなら、今日は月曜ではない。

2:A駅の売店に「本日ポイント2倍」の札が立っているなら、今日は月曜だ。

* 注意 この問題には「正解」があります。

[ヒント] 言われている内容以外は考えないこと(18~19ページより)

これは、論理力をチェックするための問題。

論理の問題を扱うときに大事なのは、言われている内容(たとえば「月曜ならばA駅の売店に『本日ポイント2倍』という札が立つ」)以外のことは考えないということだそうです。

「月曜ならばA駅の売店に『本日ポイント2倍』という札が立つ」は、「月曜であれば札が立つよ」ということしか言っていません。

「月曜に札が立つのだから、火曜は立たないんだよね」と思ってしまいそうですが、「他の曜日はどうか」については一切言っていません。

したがって、正解は1。月曜には札が立つのですから、立っていなければ(とりあえず)月曜ではないということになるわけです。

そして、2は間違い。

「月曜ならばA駅の売店に『本日ポイント2倍』という札が立つ」を、「A駅の売店に『本日ポイント2倍』の札が立っているなら、今日は月曜だ」と言うとすれば、それは「3月にはモリさんがウキウキする」と言うのを、「モリさんがウキウキしてるなら、3月だ」と言い換えるのに似ていると著者は指摘しています。

もしもこの言い換えが正しかったら、モリさんは、夏休みもクリスマスもウキウキできなくなってしまうということになります。

目の前にある情報を、思い込みや勝手な連想なしに、ことばどおりに受け止めて考える。それが論理の世界。そして論理は「考える力」の基本だといいます。

本書で紹介されている「考える力」はクリティカル・シンキングをベースにしていますが、論理はクリティカル・シンキングの基本でもあるそうです。(18ページより)

事実と意見の線引き

その他、クリティカル・シンキングが大事にしているものが「事実と意見の線引き」。

事実は、証拠を見せる・聞かせる・触らせることで証明できるもの。そして意見は、人が頭のなかでつくり出す考え。よって、一人ひとり違ってくるわけです。

「地球は丸い」は事実であり、それは写真を見せることで証明できます。

一方、「考える力が必要だ」は意見だということになります。そう思っている人はたくさんいるでしょうが、だからといってそれが「証拠」にはならないからです。

なぜなら、「考える力は必要じゃない」という人がどこかにいても、おかしいことではないのですから。

事実は「正しいか否か」が大事ですが、意見は「正しいかどうか」ではなく、「理解力があるかどうか」がポイント

だからこそ著者はここで、「世の中に正しい意見などというものはない」ということをしっかり心に留めておくべきだと主張しています。

「あなたの意見は正しい」という言い方を時々耳にしますが、あれは本来、「あなたの意見は説得力がある」と言うべきです。

だって、おかしいじゃないですか。何かを「正しい」と決めるということは、それ以外のものを「正しくない」として排除できるということです。そんなこと、断じてあってはなりません。(22~23ページより)

そして、説得力のあるなしを決めるのが根拠。

ざっくりまとめて言うなら、どれだけよい(=説得力のある)根拠を考えられるかが、意見の良し悪しを決めるということです。

目の前にある情報が「事実」か「意見」か、ということを決めるのもまた意見。「これは事実(意見)だ、なぜなら~」と根拠とともに頭のなかで考えるからです。(21ページより)

この問題がそうであるように、あるいはそれ以上に、本書には「ヘンテコな問題」もたくさん登場します。

しかし、それには理由があるようです。他人にもAIにもコピーされない、自分だけのオリジナルな思考力を磨くためには、普通のことを普通のやり方で考えていたのではダメだということ。

だからこそ「ヘンテコな問題」を通じ、自身の内部にある突出した思考を呼び覚ましたいところです。

Photo: 印南敦史

Source: SBクリエイティブ

メディアジーン lifehacker
2019年6月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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