「新訳 不思議の国のアリス 鏡の国のアリス」

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新訳 不思議の国のアリス 鏡の国のアリス

『新訳 不思議の国のアリス 鏡の国のアリス』

著者
ルイス・キャロル [著]/建石修志 [イラスト]/高山宏 [訳]
出版社
青土社
ISBN
9784791771509
発売日
2019/03/22
価格
3,960円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「新訳 不思議の国のアリス 鏡の国のアリス」

[レビュアー] 鈴木洋仁(社会学者・東洋大研究助手)

 夢の絵本だ。

 明治維新前後の英国で書かれた7歳の少女の遍歴が令和の今、夢として蘇(よみがえ)る。

 読者は三つの夢を見る。

 まずは、建石修志による、絵画と装丁を組み合わせた造本にうっとりする。天然色の絵を追いかけるだけで頁(ページ)をめくる指が止まらない。

 次に、その絵に合わせた新しい翻訳に唸(うな)る。<見る>ことを知り尽くし「学魔」を自称する高山宏の訳文は、原文の言葉遊びを夢幻の日本語に置き替える。

 そして何よりもアリスの夢に浸る。「私、自分じゃないのですもの」と迷う彼女の夢に、読者も入り込む。「昔のことが思いだせない」のは、アリスか読者か。

 『不思議の国』でトランプが顔にふりかかったアリス=写真=は、『鏡の国』では、言葉とたわむれる。そんな夢の世界で、いつまででも眠りつづけたい。(青土社、3600円)

読売新聞
2019年6月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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