『「食べること」の進化史』
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<東北の本棚>「食べること」の進化史
[レビュアー] 河北新報
人工的に培養した肉に、3Dプリンターを使って立体化されたラーメン、代替食としての昆虫。食を巡る世界が大きく変化しつつある現状を、宮城大の分子調理学の専門家が論じる。
人類は250万年にわたり採集生活をし、1万年前になって農耕や牧畜を始めた。食の長い歴史を振り返れば、食べたい物を食べられるようになったのは「つい最近」と分析。その上で、進化しつつある技術によって100年後の人類が何を食べているのかを読み解こうとする。
培養肉の章では、オランダの生理学者らが牛の幹細胞などから140グラムの牛肉のパテを作ったニュースを記載。経費は約3500万円と高額だったが、日本企業が2020年代に100グラム60円で売る目標を立てていることも紹介する。食糧不足などの解消が期待される半面、不気味さの打破が普及の鍵と喝破する。
3Dプリンターについては、複数の食材カートリッジを入れて「調理」ができるようになれば、貧困地域などで活用できると指摘。味付けなど個人の好みを入力できれば、個別化した「未来食」を生む万能調理器になると見る。
将来的に不足が懸念される動物性タンパク質を念頭に、イナゴなど昆虫食のビジネス性にも着目する。
光文社03(5395)8116=972円。