『自民党』
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参院選前、必読!現首相、首相候補を“文章”で読み解く
[レビュアー] 立川談四楼(落語家)
選挙の季節です。師匠の談志は1期6年の参議院議員を務めました。入門直後の私は遊説隊員を経て議員会館に出入りする前座となり、そこでの見聞は実に得難いものでした。
談志は無所属で立候補し、自民党入りしたのですが、当時の首相は佐藤栄作で、まだ幹事長前の中曽根康弘の颯爽たる姿など、いまだに瞼に焼きついています。分厚い、清濁併せ呑むという印象の自民党でした。
近年、これがかつての自民党だろうかと思うことが多くなりました。そこで本書です。売り出し中の政治学者が政治家の文章をじっくり読み、理念や構想を把握するという主旨の一冊です。対象となる政治家は現首相と首相候補で、安倍晋三、石破茂、菅義偉、野田聖子、河野太郎、岸田文雄、加藤勝信、小渕優子、小泉進次郎という面々です。
公文書の改竄があったのに責任を取らず、傲岸不遜に居座り続ける麻生財務大臣を欠くのは残念ですが、なるほどという布陣で、安倍首相の「改憲」が昨日今日に始まったものではないことがいきなり分かったりします。
改元の折に「令和おじさん」として一躍人気者になった菅官房長官の拠って立つところも明かされます。官邸が人事を握り、官僚が忖度する理由です。菅さんは、人事が何より大事だと横浜市議時代に痛感し、今それを実践しているのです。そして本書にはその弱点も指摘されています。官房長官会見における東京新聞社会部の望月記者とのバトルです。記者に圧力をかけたことが大きな話題になりました。
女性は野田聖子さんに肩入れするのではないでしょうか。首相を目指しての挫折もありましたが、不妊治療による体外受精、卵子提供による出産を経験した野田さんは、出産の多様性の尊重を訴えているからです。
普段は露わにしませんが、政治家の本音が透けて見えてきて、参院選の一助になるのは確実の一冊です。