おまえの罪を自白しろ…真保裕一著

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おまえの罪を自白しろ

『おまえの罪を自白しろ』

著者
真保 裕一 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784163910048
発売日
2019/04/12
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

おまえの罪を自白しろ…真保裕一著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 ミステリーの「誘拐もの」は、人質とその家族の心情、捜査当局を縛るタイムリミット、身代金受け渡しのサスペンス、メディアとの攻防、犯人の動機の意外性と、定番的な読ませどころが揃(そろ)っているだけに、それを料理する作家の個性がよく表れる。たとえば現代史に通じる重厚な警察小説『64』(横山秀夫)。トリッキーな真相にのけぞる『二の悲劇』(法月綸太郎)。本書も、「待ってました!」と声をかけたくなるほど真保裕一らしいフィクショナルなリアルに満ちている。

 三歳の子供の誘拐事件なんて、小説であっても痛ましくて憤(いきどお)ろしい。しかし本書の犯人の要求は、人質の祖父である衆議院議員・宇田清治郎に、彼が関与した公共事業にからむ疑獄の一切を白状させることなのだ。つまり一種の義賊なのか? と思えば読む方の心も宙づりになる。人質の無事を願う家族と、疑獄を掘り起こしたくない総理+官邸サイドのあいだで、清治郎と彼の息子たちは煩悶(はんもん)する。犯人の要求を容(い)れて記者会見を開き「自白」するのか、それとも――。一気読みで夏の夜の寝苦しさを忘れられます。(文芸春秋、1600円)

読売新聞
2019年6月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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