ロックンロールに生きた男が遺したロング・インタビュー
[レビュアー] 吉田豪(プロ書評家、プロインタビュアー、ライター)
内田裕也が自身の出演映画について語る最後のインタビュー本。「なんか今の日本映画って、男か女か分からねえヤロウとか単なるカワイコちゃんが主演して、やれ芸人だエッセイストだイラストレーターだミュージシャンだなんて、小器用な奴らが脇を固めてる。それで製作には映画会社だけじゃなくって、TV局だ大出版社だ広告屋だがスラーッて並んでてさぁ。人気ドラマのスペシャル版とかベストセラー漫画の映画化で、もうひと儲けしてやろうってハラなんだろ? でも誰が金とメンツ賭けてるのか、さっぱり分かりゃしねえ」「(ウェイトレスの女性が)あの、ゆで卵(ポーチド・エッグ)の茹で加減は、いかがいたしましょう?」「ハードボイルドでよろしく」という冒頭部分だけで100点なんだが、とにかく裕也さんのナメられたら終わりな姿勢も最高だった。
「俺がロマンポルノに出てた頃はもう毎晩みんな、ゴールデン街にたむろして、喧嘩ばっかりしてたよ。酒飲んで揉めてって、その繰り返し」「監督は、喧嘩も強くなきゃダメなんだ。プロレスラーが監督をやればいいってわけじゃねえけどさぁ、でもアタマおかしい野郎どもを、束ねていくんだぜ? オカマか喧嘩強いか、そのどっちもじゃなきゃ」
よくわからない理論だが、とにかく喧嘩上等な世界にロックから乗り込んでいく以上、腹をくくるしかない。なので、「俺、京撮(東映京都撮影所)にバット持ってったんだ」「何しろ俺、初めての京撮じゃない? ナメられちゃいけねえって思ってね。それで金属バット担いだまま新幹線に乗って、京都まで行ったんだ」なんてことになるし、晩年のトレードマークだった杖を映画の中でも使っていたことについて聞かれても、「ああ、これ。『ロックンロール・ウェポン』ね」「これはすごいよ。急所に当てたら死ぬからね、マジで」と言い出すわけなのであった。この姿勢、役者としてはともかくロックンローラーとしては正解!