英語・資格の勉強に必要なのは「メンタルバリア克服」と「不安の活用」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『勉強法 The BEST 〜プロが厳選! 最強ノウハウ100〜』(安河内哲也 著、あさ出版)の著者は、東進ハイスクールの人気英語講師。
TOEIC関連書籍や勉強本など、多くのベストセラーを生み出していることでも有名です。
タイトルからもわかるとおり、最新刊である本書のテーマは「勉強法」。受験勉強のみならず、TOEIC、公務員試験、英検、FPなどの各種資格試験、自己研さんなど、さまざまな勉強をしていくうえで有効な勉強法が紹介されています。
英語以前に、勉強のやり方がわからずに、努力しても成績がなかなか上がらず困っている人は少なくありません。
参考書を買って、一生懸命ノートに写してみたけれど、問題がさっぱり解けるようにならない。一生懸命本を読んで理解しているけれど、英語が話せるようにならない。そんな悩みをたくさん聞いてきました。(「はじめに」より)
そこで本書では、そうした悩みに対して著者が答えてきたことをまとめているわけです。そ
んな本書のPart 4「モチベーションは、コントロールするものだ!」のなかから、3つの要点を抜き出してみたいと思います。
「どうせ無理」というメンタルバリアを打ち破ろう
新しいことを始めようとするとき、まわりの人たちから「無理だよ」「できないよ」それは大変なことだよ」などと止められることがあります。
その結果、言われた側も真に受けて「できない」と思い込み、最初の一歩が踏み出せずじまいになってしまったりもすることも考えられます。著者も過去には、いろいろな忠告を受けてきたようです。
英語を話せるようになりたいと思ったときには、「アメリカにも行ったことがないお前が英語を話せるようになるのは無理だ」。
予備校の講師になろうと決めたときも、「予備校講師は話が上手い人がなるものなんだから、お前には無理だ」。会社を立ち上げたいと思ったら、「どうせつぶれるからやめておけ」。
20代のころに「本を書きたい」と発言したときにも、返ってきたアドバイスは「本を出版するのは難しいし、どうせ売れないからやめておけ」というものだったといいます。
しかし、皆さんはここでこうして、私の本を読んでくれています。 今まで、「無理」と周りの人に言われたことは、チャレンジしてみれば、何とか形になってきました。 もちろん、大変でしたし、苦労もしました。
ただ、周りの人が言っていたように「絶対無理」ではなかったのです。結果として、しっかり努力すればすべて実現することができました。(129ページより)
そして、そんな経験が背後にあるからこそ、著者は「周囲からの『無理だよ』という攻撃を打ち破る必要がある」のだと断言しているのです。
まわりの人たちが私たちに与えるメンタルバリアを打ち破ることが、勉強を成功させるうえで大切なのだと。
人間はひとりひとりがなんらかの能力を持っており、時間も可能性も平等に与えられています。だからこそ周囲の声に引き止められることなく、自信を持って新しいことにチャレンジすべきだというのです。(128ページより)
不安があるから、勉強し、向上する
勉強をしていると、さまざまなことが不安になります。そのため勉強が手につかず、先に進まなくなったりするわけです。しかし、そもそも人間が勉強するのは不安があるからこそ。
そこで、不安を勉強のモチベーションアップのために利用する大胆さを持とうと著者は提案しています。
私は、生徒の皆さんからの「勉強が順調に進まず不安でたまらない」という声をいつも耳にします。 しかし、そのような危機感は勉強を成功させるために必要なものです。 不思議なもので人間は危機感がないと、なかなか一生懸命物事に取り組めません。だから、ときどき不安になり、それを乗り越えようと努力するのです。(136ページより)
一方、「勉強していてまったく不安がない」という人もいるもの。そういうタイプの人は、勉強に刺激を与える機会を意図的につくったほうがよいそうです。
たとえば英語を学習している人であれば、TOEIC L&RテストやTOEIC S&Wテストを1年に3回ほど受けるべきだと著者は言います。
そうすれば、テストを受けるたびに自分の弱点が見つかるため危機感を持つことになり、それが勉強の励みになるからです。(136ページより)
最後は絶対うまくいくと信じる
著者によれば、ものごとをネガティブに考える人とポジティブに考える人を比較した場合、勉強においても仕事においても、生産性が高いのはポジティブに考える人。
なぜならポジティブに考える人は、精神的な反省をしないから。クヨクヨせず、常に自分を向上させようとするわけです。かくいう著者も昔は、ちょっとしたことで落ち込み、そのせいで仕事や勉強が停滞してしまうことがあったのだそうです。
しかし、いまではポジティブにものごとを考えるためのテクニックを使い、自分をコントロールしているのだといいます。
そのテクニックは、どんな困難に出会っても、自分の人生は最終的にうまくいくと思い込むことです。 私は宗教には無頓着で、葬式の時だけ、自分が仏教徒だと気がつくような人間です。
そんな私ですが、実は自分の心の中に、勝手に神様をつくり出しています。 そして何かうまくいかないことがあると、「これは、最後にはうまくいくように神様が自分に与えてくれた試練なんだ」と思うようにしています。(142~143ページより)
たとえば仕事で失敗し、損害を出してしまったとしたら、「ああ、よかった、これくらいの損害ですんで」「これで、将来起きたかもしれないもっと大きな失敗を避けることができた」というように考えるということ。
つまりポジティブ思考を身につけるためには、勝手な思い込みを自分のなかでつくり出してしまえばいいという発想。
そのように考えているだけに、どれほど大きな失敗をしても、「最後は絶対うまくいくんだ」と図々しく思い込んでしまおうと訴えかけているのです。(142ページより)
本書は勉強の技術に関する本ですが、技術と同様に「気の持ちよう」が大切だと著者は主張しています。勉強に対してどのように肯定的な態度を持つかということに関し、多くのページを割いているのはそのせい。
物事をどうポジティブにとらえていくかということが、技術と同様に重要だと考えているからだそうです。
つまり本書を活用すれば、技術のみならずポジティブなものごとの捉え方も身につけることができるわけです。
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Photo: 印南敦史
Source: あさ出版