「60歳までに2000万円用意しろ…だと?」と思った人のためのマネーハック

レビュー

6
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2000万円もってないオレたちはどう生きるか

『2000万円もってないオレたちはどう生きるか』

著者
岡 久 [著]/日本ライフシフト研究会 [著]
出版社
自由国民社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784426125073
発売日
2019/07/03
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「60歳までに2000万円用意しろ…だと?」と思った人のためのマネーハック

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「老後2000万円問題」が話題になっています。

金融庁が6月3日に公表した「金融審議会 市場ワーキングク・グループ報告書」に、「夫婦の老後資金としては年金以外に2000万円の蓄えが必要」という表記があったことから、物議を醸すことになったわけです。

参院選を間近に控えた時期ということもあり、7日には麻生太郎財務大臣は「表現が不適切だった」と発言。さらに10日には安倍晋三総理大臣が参議院決算委員会で釈明、反論しました。

が、この問題が契機となり、多くの国民が自分の将来のお金の問題について考える必要性を実感したことだけは間違いなさそうです。

だいいち現実問題として、「これから2000万円を用意しろと言われても無理な話」だというかたのほうが多いのではないのでしょうか? そればかりか、「そのためにどうすればよいのか」については、なかなか答えが出しにくくもあります。

そこで参考にしたいのが、『2000万円もってないオレたちはどう生きるか──60歳からのリアル』(岡 久、日本ライフシフト研究会 著、自由国民社)。

著者は、人材開発、働き方改革、労務管理などさまざまなコンサルティングを手がけているという社会保険労務士。

本書では20年以上におよぶコンサルタントとしての実績と専門知識を活かし、さまざまな事例を挙げながら「お金と人生」について知っておくべきことをまとめているわけです。

きょうは第1章「六十歳から“リアル”生活の裏・表!」のなかから、記憶にとどめておきたいいくつかのことを抜き出してみたいと思います。

本当はいくらあればよいのか?

定年後の暮らしについて考えるとき、生活費などお金の面で不安を感じるのは当然。仮に再雇用や再就職できたとしても、給与は大幅に減ることになります。

そのため別の収入先を追加するか、支出を減らす必要に迫られるわけです。

ただし、まずは確かめておくべきことがあるのだそうです。それは、自分自身が満足できる生活をするためには、いったいいくら必要なのかということ。

この件に関しては、「不自由のない生活をするためには夫婦2人で月27万円が必要。そのためには資産が2000万円必要」などと、冒頭の話題につながる話をよく聞きます。

すると当然ながら暮らしや預貯金への不安を煽られてしまうことになりますが、こうした話は気にする必要がないと著者は主張しています。

現在の自分ではどうしようもないことは「ある」からこそ、まずは後悔や未練をあえて封印し、これからできることだけを考えるようにすべきだというのです。

私たちが将来に向かってもらえるであろう年金の平均額は、およそ20万円ほど。ただし少子高齢化のあおりを受け、もう少し下がる可能性のほうが高くなっています。そして、そこから社会保険料や所得税が引かれることになります。

若いころであれば、限られたお金のなかでなんとかやりくりできたかもしれません。しかし今後は、若かりしころより食費や遊興費なども減っていくはず。

「いくら必要だから何をしなければならない」といった強迫観念にさらされて考えるのではなく、これからは限られたお金の中で生活する工夫といったことを考えるとよいでしょう。

必要なことは、巷で氾濫する情報に惑わされずに、まずは自分の現状と生活を確認して、いくら必要で、そしてどのくらい年金がもらえるかを算出すること(41ページより)。

さらには健康第一で無理をせず、やりくりの工夫をする。これに尽きるということです。(39ページより)

現在の生活費をいったんご破算にする

そこでまず最初にするべきは、自分が考えている快適な生活水準を保つには、いくらあればよいのかを算定すること。

ちなみにその際、現在の生活費はいったんご破算にすることから始めるべきだそうです。

光熱費や食費、通信費、交際費、その他もろもろの経費を「本当に適正なのか」とチェックし、不要不急で無駄な金額を抑えてみるということ。

なお、そうなると趣味や交際にかかる遊興費をなにより先に節約しようと考えがちですが、それでは無味乾燥でギスギスした人生になりかねないと著者は指摘しています。

若いころなら我慢できても、年齢を重ねると心のゆとりを保つことがさらに重要になるもの。そういう意味でも、遊興費を極端に削ることはおすすめできないというのです。

倹約するなら食費や光熱費、通信費など「生活に必要な定額料金」と認識されているところから見なおす必要があるということ。電気代なら基本契約のアンペアを下げて基本料金を節約するとか、携帯電話の料金コースを下げることなどもできるでしょう。

また、年齢を重ねれば食べる量も減ってくるので、食費を下げることも可能です。

そのように、生活や行動範囲の規模が狭まることに合わせて固定費を下げることが大切だということ。

同じく若いころから加入していた生命保険や医療保険なども削減の対象になるといいます。(41ページより)

「リバースモーゲージ」の落とし穴

昨今、「リバースモーゲージ」が話題になることがあります。

高齢者の資金づくりのために持ち家を担保にしてお金を借り、毎月の返済金は利子だけでOKで、当事者が亡くなると担保を売却して返済に充当するというシステム。

しかし欧米では一般的で、金融庁も推奨しているものの、いまひとつ定着していないことには2つの理由があるのだと著者。

まず第一は、担保の評価対象が建物でなく土地だけだということ。

建物はほとんど無価値と見なされ、土地の価格だけで評価されるため、おのずと長期的に地下が安定している地域が有利になることに。その反面、地価が低い地方での契約は条件が厳しくなるわけです。

第二に、土地の評価が低い場合には、それを補填する意味で現金資産が求められること。

利用したい六十歳以上の二人以上の世帯の貯蓄額は「一千万円未満」が三十六パーセントを占めていて、持ち家だが貯蓄が少ないという層が必要としているのです。

しかし金融機関側は対象不動産を一都三県の高額資産に絞ったり、保有金融資産の額を三千万円以上にしたりして、融資の条件のハードルをかなり上げているのが現状です。(48ページより)

つまりはリバースモーゲージを利用したい人と金融機関が融資したい人とのミスマッチが存在しているということです。(46ページより)

長く生きるほど“リスク”が高くなる?

そしてもうひとつの問題は、「人生百年時代」といわれて寿命が想定以上に伸びていること。

契約した年数より長く生きることになると、いったんは現金あるいは担保で借り入れ分を清算しなければならないわけです。

しかし収入の少ない高齢者には現金資産が少ないため、清算するためには高齢の契約者に住宅から立ち退いてもらわなければならなくなります。

しかしそれでは金融機関のイメージダウンにつながるので、契約には慎重にならざるを得ないというのです。

こうした理由があるからこそ、定期的な収入が少ない高齢者にとってはお得なようにも見えるリバースモーゲージは、いざ契約するとなるとかなりハードルが高いというのです。

日銀のゼロ金利政策によって、融資事業で利益を出すことが困難な時代ですから、金融機関はいろいろな事業を考案して、少しでも儲けを出すことに必死になっています。

そのうちのひとつがこの「リバースモーゲージ」なので、(中略)どんな高齢者にとっても優しい制度とはいえないことを覚えておいてください。(49ページより)

金融機関が立ち上げる予定のその他の高齢者向き制度にしても、ゼロ金利政策が続く限り、高齢者にとって本当に役立つのかを注意深く判断する必要があるでしょう。

いわば、この問題がそうであるように、ステレオタイプの議論に惑わされてはいけないのです。

事情は人それぞれ違うのですから、個人個人で判断して自分の行く末を選択することが重要だということです。(48ページより)

以後の章では「仕事」「お金」「心と人間関係」「住まい」「健康」について、六十歳からの“リアル”がこと細かに解説されていくことになります。

先行きの不安な時代を生き抜くために、ぜひ参考にしたい一冊だといえます。

Photo: 印南敦史

Source: 自由国民社

メディアジーン lifehacker
2019年7月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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