イタリア史10講…北村暁夫著/フランス史…ギヨーム・ド・ベルティエ・ド・ソヴィニー著 Histoire de France

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イタリア史10講

『イタリア史10講』

著者
北村 暁夫 [著]
出版社
岩波書店
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784004317661
発売日
2019/03/21
価格
972円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

フランス史

『フランス史』

著者
ギヨーム・ド・ベルティエ・ド・ソヴィニー [著]/鹿島 茂 [訳、監修]/楠瀬 正浩 [訳]
出版社
講談社
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784065150290
発売日
2019/04/12
価格
3,402円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

イタリア史10講…北村暁夫著/フランス史…ギヨーム・ド・ベルティエ・ド・ソヴィニー著 Histoire de France

[レビュアー] 宮下志朗(仏文学者・放送大特任教授)

通史に気軽にアクセス

 一国の通史を単独で書ききった力業を2冊紹介する。

 『イタリア史10講』は、古代からの国の歴史を10講で紹介する「10講シリーズ」として、独仏英に続いて登場した。複雑に変化するイタリア史を描く基本理念は、ヨーロッパ・地中海史に組むことと、地域的多様性に留意すること。この国は、偉大なローマ帝国の崩壊で領土的統一性を失い、多数の地域に分解された弱みを抱える。19世紀後半の国民国家成立までいかに頻繁に、フランス(かつての属州ガリア)を始めスペイン、オーストリアなど外国の支配・干渉にさらされたことか。

 19世紀、イタリア人意識の高揚を背景に、作家マンゾーニは、ミラノ方言で刊行された大長編『いいなづけ』をトスカーナ方言で改訂し、この方言が標準語になるきっかけとなった。だがイタリア王国が誕生しても、地域アイデンティティーは強固で、国民意識は薄かった。中世以来「神聖ローマ帝国」という枠組みがあったドイツとは違う。統一された国家の帰着がナチスによる「第三帝国」というのは、複雑な心境だが。ヴィスコンティ監督の『山猫』、スコーラ監督の『特別な一日』など、各講の冒頭に、時代を象徴する作品のくだりを掲げるアイデアもいい。

 一方、仏語の名著『王政復古期』の著者が手がけたのが『フランス史』。パリでアメリカ人学生に教えていて「フランス語で書かれた簡便なフランス史」が存在しないことに驚愕(きょうがく)したのが執筆の動機だ。専門家による高級なものは多いが、気軽にアクセスできる本は希少なのだ。

 アンリ四世について、「快活さ、上機嫌、親しみのある物腰、機知に富んだ発言」と魅力を列挙し、「大きな弱点は、抑制しがたい恋愛への熱い思い」と述べてから、おもむろに政治へと話題を転じる語り口はさすが。「昔ながらの(レトロ)」記述スタイルを楽しみ、大冊を数日で読み終えた。鹿島茂監訳、楠瀬正浩訳。

 ◇きたむら・あけお=1959年生まれ。日本女子大教授 

 ◇Guillaume de Bertier de Sauvigny=1912年生まれ。フランスの歴史家。

読売新聞
2019年7月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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