東京 古民家カフェ日和…川口葉子著

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東京 古民家カフェ日和

『東京 古民家カフェ日和』

著者
川口 葉子 [著]
出版社
世界文化社
ジャンル
歴史・地理/旅行
ISBN
9784418192090
発売日
2019/03/20
価格
1,650円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

東京 古民家カフェ日和…川口葉子著

[レビュアー] 通崎睦美(木琴奏者)

 本書では、東京23区内29軒、そして遠足気分で出かけられる郊外11軒、合わせて40軒の古民家カフェが写真と共に紹介される。

 全国古民家再生協会は、1950年以前に伝統的構法で建てられた家を古民家と定義するが、ここでは、築百年以上の風格ある家から、1958年に建てられた材木問屋の倉庫や1970年代に建てられた棟割長屋まで、著者のお眼鏡に叶(かな)ったカフェが取り上げられる。そのヴァリエーションが楽しい。

 各建物がカフェとして生まれ変わるまでの道筋には様々なドラマがある。移築が繰り返されたもの、祖父母から受け継いだもの、偶然に見つけ心惹(ひ)かれて入手したもの。<「新しく建て直すほうが費用は安かったのですが……」と、古い建物の大規模改修をおこなったカフェ店主たちは口を揃(そろ)える>と記されるように、採算を度外視してまでも、それぞれの地でカフェを営みたかった思いが、各ページから溢(あふ)れている。

 実は私も、近所で取り壊される1922年の建物の部材を譲り受け、それを活(い)かして倉庫代わりの小さな長屋をリノベーションした経験がある。それ故、つい他人事とは思えず、本書をカバンに忍ばせ古民家カフェ巡りをしている。

 赤坂の繁華街に取り残されたように建っていた祖父母の家をカフェとホテルにした「TOKYO LITTLE HOUSE」では、カフェを担当する深澤晃平代表の妻・杉浦貴美子さんと古民家談義ですっかり盛り上がった。谷中方面も数軒巡ったが、どのお店もスタッフの方の顔がどこか誇らしげで活き活きとしているのが印象的だった。

 次回は、2階建て木造アパートを改修した「SPICE CAFE」(墨田区)で、インド仕込みのカレーを食べようか、青梅柚木まで足を伸ばし、青梅夜具地の織物工場跡「noco BAKERY & CAFE」で、香り豊かな天然酵母パンを味わおうかと迷っている。

 ◇かわぐち・ようこ=ライター、喫茶写真家。『カフェノナマエ』『東京の喫茶店』など著書多数。

読売新聞
2019年7月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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