本物の巨人の肩の上にじかに立つことを疑似体験するため紐解く本

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プリンシピア 自然哲学の数学的原理 第1編 物体の運動

『プリンシピア 自然哲学の数学的原理 第1編 物体の運動』

著者
アイザック・ニュートン [著]/中野 猿人 [訳]
出版社
講談社
ジャンル
自然科学/物理学
ISBN
9784065163870
発売日
2019/06/20
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

人類の叡智の書を我々が紐解く意義

[レビュアー] 小飼弾

 アイザック・ニュートン。まさか新書の著者名にこの名前が登場するとは。その代表作“Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica”の初版が上梓されたのは1687年。今から3世紀以上前のことである。それが『プリンシピア 自然哲学の数学的原理 第1編 物体の運動』(中野猿人訳)として邦訳されたのは1977年。この本を42年の時を経て復刊する新書レーベルはブルーバックス以外ありえないだろう。

 3世紀以上前の著作だけあって、著作権はもちろん切れている。ラテン語で書かれた原著も、ニュートンの死後出版された英訳“Mathematical Principles of Natural Philosophy”もWebなら無料だ。そして訳者自身「けっして読み易い本ではない」と冒頭で“TL;DR(Too long;Didnʼt read)宣言”している。科学者でも科学史家でもない我々が邦訳を紐解く意義はどこにあるのか?

 それは、本物の巨人の肩の上に、じかに立つことを疑似追体験するためではないか。巨人は展望台ではない。動けば振り落とされそうになるし、ましてやエレベーターもコイン式双眼鏡もない。しかし真摯に問えば答えてくれる。3世紀の時と言葉の壁を超えて。そしてこの肩は相対論と量子論へと踏み出すための足場となったにとどまらず、今もなお現役で数多の工学の現場を支えている。

 ニュートン工学があれば宇宙に手が届く。人類史上最高の頭脳にだって、本書があれば。

新潮社 週刊新潮
2019年8月1日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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