食費や電気代を節約するより、まずフードロスを削減するべき理由

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「食品ロス」をなくしたら1か月5,000円の得!

『「食品ロス」をなくしたら1か月5,000円の得!』

著者
井出 留美 [著]
出版社
マガジンハウス
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784838730582
発売日
2019/06/27
価格
1,100円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

食費や電気代を節約するより、まずフードロスを削減するべき理由

[レビュアー] 鈴木拓也

農林水産省の最近の調査によれば、日本国内で「まだ食べられるのに廃棄される食品」は、1年間で643万トン。

その半分近くの291万トンは、一般家庭で捨てられたものです。この「食品ロス」は、世界の年間食糧援助量に匹敵する途方もない量です。

家庭で生じる食品ロスは、「消費期限が近いから」とか「少し傷んでいるから」といったささいな理由によるものがほとんど。

ちょっとの気づかいと工夫によって防止できたものばかりですが、見方を変えれば、ここに食費節約のチャンスがあると考えることもできます。

チャンスどころか、「どんな節約術や貯蓄法より、食品ロスを減らす方が、家計に役立ちます」と著書で語っているのが、食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さん。

著書の『「食品ロス」をなくしたら1か月5,000円の得!』(マガジンハウス)には、65もの食品ロスを減らして節約するテクニックが掲載されています。そのいくつかを紹介しましょう。

買い物は食後に、買う分のお金だけ持って行く

本書には、ミネソタ大学で行われた調査の話が出てきます。これは、空腹の人・そうでない人が食材を買い出しした時の金額を比較したもので、空腹の人の方が金額が高く、最大で64%も開きがあったそうです。

これは、空腹時に胃の中で産生されるグレリンというホルモンが脳に影響して「空腹を満たしたい」という欲求を催させ、余計に買わせる行動につながるからだそう。

ということは単純計算で、空腹でない時に1000円で済んでいる買い物が、空腹の時だと最大で1640円になってしまうのです…。

逆に言えば、空腹を避けて買い物に行けば、640円分、無駄な買い物を防ぐことになります。(本書21pより)

もう1つの買い物テクは、「買う分のお金だけ持って行く」。

例えば、2000円までと決めておき、その範囲内で買い物を済ませるというやり方。

井出さんは、スマホの計算機能で足し算しながら上限に収まるよう買い物をすることで、500円以上はセーブできていると述べます。

さらに、1週間くらいの献立を考えておき、必要な食材をメモすることで「ついで買い」が減らせ、それだけで約500円、時には数千円もの節約が実現するとも。

冷蔵庫は「2入5出」の法則が効果的

家庭の食品ロスの鬼門とも呼べる冷蔵庫。キチキチに入っている冷蔵庫だと、奥にある食材が把握できず、食品ロスが生まれやすいものです。

「“入れる”の繰り返しで、“出す”がないと、冷蔵庫が便秘になってしまいます」と、井出さんも指摘します。

おすすめなのは、土日に買い物を済ませ「入れる」はその2日間だけ、平日の5日間で「出す」に徹する「2入5出」の法則。

井出さん自身は、これを習慣化したことで年に3000~4000円近く節約でき、冷蔵庫もきれいに使えるようになったそうです。

そして、冷蔵庫を満杯にしたままでおく、もう1つのデメリットは電気代が余計にかかること。

入れる量を最大容量の7割ぐらいに抑えておくと、電気代が35%ほど安くなるそうです。

電気代を節約しようと小さめの冷蔵庫を使って、食材で満杯にしてしまうと、かえって電気代がかかることになるかもしれず、注意したいところです。

さらに、冷蔵庫・冷凍庫の扉の開け閉めを極力減らすことで、年間445円の電気代節約になるとも。

残り物には福があって節約もできる

井出さんは、NHKの番組で、ツナ缶工場で勤める人が「作ってから半年たって、初めて味がしみてくる」、「賞味期限が切れるくらいのものを、わざわざ選んで買う」と話しているシーンに言及し、缶詰は賞味期限にシビアになる必要はないと説きます。

特売で100円程度で売られている缶詰は、実は、賞味期限までだいぶ余裕があります。

しかも、缶詰の賞味期限は、缶の品質の保持期限が3年とされているだけで、缶詰の中身は、理論上は、半永久的に持つと言われています。(本書24pより)

缶詰は、まさに家計の味方。賞味期限が近づいて特売となっている缶詰は、チェックしておきましょう。

また、納豆やヨーグルトのような、腐りやすいと見られている発酵食品も、賞味期限だからと見捨てる必要はないそうです。

こうした食品の賞味期限には「安全係数」といって最大20%の余裕を持たせており、昨日・今日で期限切れのものでも実は問題なし。

それどころか、「切れるころがおいしい」とのことで、見切り品のワゴンセールは宝の山と言えそうです。

いつも捨てる野菜の部分も大活用

ブロッコリーの芯やセロリの葉といった、ふだんは捨てられている野菜の部分。

これらも料理に活用することで、食費の節約につながり、生ごみも減らせます。

どのように料理するかは、例えば料理研究家の有元葉子さんの著書や、ネット上のレシピ集から簡単に見つけることができます。

1つの野菜の部分活用で節約できるのは数十円ですが、塵も積もれば山で、年間にすれば結構な額になります。

中でも気軽に作れるものとして、井出さんが推すのが「ベジブロス」という、ほぼ野菜くずだけで作る具だくさんスープ。

タマネギやダイコン、ニンジン、ショウガなどの皮、枝豆やグリーンピースなどのさや、シイタケやシメジなどキノコ類の石づき、ニンジンのヘタやセロリの葉っぱなど、野菜の切れ端を鍋に入れて、水とお酒で、コトコトと煮出していきます。これにローリエやコショウを加えると、香りがぐっと良くなります。(本書66pより)

ブイヨンを使う必要もないので、その費用が浮くだけでなく、カレーやリゾットなどのスープベースにもなり一石二鳥です。

上に挙げたのは、本書にあるテクニックのごく一部。

やれる範囲でたくさん実践するほど、食費は節約できるとともに、食品ロスを減らすことにもなります。

書名にある「1か月5,000円の得」は誇張でなく、それ以上の節約も期待できます。無駄になっている食材が多いと自覚している方は、トライしてみてはいかがでしょうか。

Image: Shutterstock.com

Source: マガジンハウス

メディアジーン lifehacker
2019年8月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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