国際連盟…帯谷俊輔著 東京大学出版会

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国際連盟

『国際連盟』

著者
帶谷 俊輔 [著]
出版社
東京大学出版会
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784130362740
発売日
2019/06/18
価格
6,380円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

国際連盟…帯谷俊輔著 東京大学出版会

[レビュアー] 篠田英朗(国際政治学者・東京外国語大教授)

 外交文書の緻密(ちみつ)な読解によって成立している純粋な学術書だが、国際連盟規約100周年の時に出版されたという点で、タイムリーだ。100年前に起こった国際秩序の変動を知りたい読者の知的欲求には答えてくれる。

 国際連盟は「失敗」した試みとして語られることが多い。だが本書は、「失敗」の研究書ではない。むしろ本書は、国際連盟が、最初の「普遍的国際機構」であったことを強調する。だからこそ国際連盟は、史上初めて「普遍」と「地域」の葛藤の問題を、抱え込んだ。本書は、そのことを、鋭く描き出す。

 米州(南北アメリカ)における国際連盟と「モンロー主義」との併存、アジア太平洋における国際連盟と「ワシントン体制」との併存は、連盟非加入の米国との関係もあり、複雑な問題であった。それらは悩みの種であったと同時に、発展の可能性を示すものでもあった。

 100年後の今日、ほとんどの国々は、国連を尊重しながら、同時に様々な地域機構で活躍している。現代国際社会において、普遍的な集団安全保障と集団的自衛権や地域的取極(とりきめ)は、相反するものではなく、むしろ相互補完的に、一続きの安全保障空間を形成している。

 本書を読むと、この国際秩序が、国際連盟における普遍主義と地域主義との葛藤の経験を通じて生まれ出たものであることが、よくわかるようになる。お互いに譲り合わない「普遍」と「地域」のせめぎ合いの結果、両者が共に形成する国際社会の秩序が現れるようになった。

 1930年代に、満州事変以降の対外行動で国際連盟を「失敗」させたのは、日本だった。そのわりには、日本人は、あまりにも国際連盟を、知らない。そしてその後の新しい国際社会の秩序のことも、知らない。

 国際連盟を知ることが、現代国際社会をよく知ることにつながる。本書は、そのことを学術的な観点から深く教えてくれる良書である。

 ◇おびや・しゅんすけ=1986年生まれ。慶応大、東大大学院を経て現在、日本学術振興会特別研究員。

読売新聞
2019年8月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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