アフリカの難民キャンプで暮らす…小俣直彦著 こぶな書店

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アフリカの難民キャンプで暮らす

『アフリカの難民キャンプで暮らす』

著者
小俣直彦 [著]
出版社
こぶな書店
ISBN
9784991084201
発売日
2019/06/15
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

アフリカの難民キャンプで暮らす…小俣直彦著 こぶな書店

[レビュアー] 戌井昭人(作家)

 著者の小俣直彦さんは1970年生まれ。現在英国のオックスフォード大国際開発学部准教授を務める。日本の大学を卒業後、邦銀勤務などを経て国連機関で難民支援の現場に携わる。しかし2007年、36歳のときに、国連機関の仕事を辞めてロンドン大の博士課程に入学する。年齢のこともあり、まわりの人には呆(あき)れられるが、小俣さんは突き進んだ。研究テーマは、難民の経済生活。08年7月から09年9月まで、論文を作成するための現地調査で、西アフリカはガーナにあるブジュブラム難民キャンプに滞在する。そこには、リベリアの内戦により、祖国を追われた難民が数万人生活をしていた。

 この滞在により、博士論文を書きあげた小俣さんではあるが、「調査を終えて、数年が経過した今も自分のなかにより鮮烈に残っているのは、学術的な手法で得た精緻(せいち)なデータより、彼らとの私的な交わりやエピソードであり、彼らが長年暮らすキャンプの『日常』なのであった」と思った。そこで書きあげたのが本書だ。

 調査目的のために1年以上過ごした難民キャンプでは、彼らの生活があった。共に生活をしていたからこそ聞こえてくる生の声があった。小俣さんは、彼らの生活に入りこみ、次第に馴染(なじ)んでいく。キャンプ内にある食堂で飯を食べ、キャンプ内の酒場で酒を飲み、彼らと一緒にサッカーを観戦する。

 もちろん難民キャンプの生活は過酷だし、問題も様々だ。戦地から逃れてきた彼らにはトラウマがあり、一筋縄ではいかない。あるとき小俣さんが、日本では自殺者が多いと話すと驚かれた。そこで、キャンプの住民で自殺をした人がいるのか訊(たず)ねると、自殺するものはいない、殺されそうになって、生きるため逃げてきたのだから、心底生きたいと思っている連中ばかりだと言われる。そこには死を身近に感じたものが持つ「生きたい」という素朴な本能があり、気概に満ちた生きざまがあった。

 ◇おまた・なおひこ=東京生まれ。東大卒。米タフツ大大学院修了。現在は主に東アフリカで調査に当たる。

読売新聞
2019年8月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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