二度読んだ本を三度読む…柳広司著

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二度読んだ本を三度読む

『二度読んだ本を三度読む』

著者
柳広司 [著]
出版社
岩波書店
ISBN
9784004317760
発売日
2019/04/20
価格
842円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

二度読んだ本を三度読む…柳広司著

[レビュアー] 宮下志朗(仏文学者・放送大特任教授)

 読書好きのあなたは、新刊をフォローする情熱ゆえに本欄を読んでいる。でも、この新刊は若き日に読んだ旧刊の再読・三読の勧め。人気推理作家が18作品を取り上げた。

 たとえば漱石『それから』。教師が涙ぐんで紹介したせいで、『こころ』と聞くと今も「背中のあたりがむずむずする」と始まる。そして“小説愛好家”にとって「『こころ』は良い。『それから』の不穏は先生(=漱石)には不似合い」なのだと見立てる。政治的要素が入るかが分岐点。わたしが「不穏」な方を再読したことは申すまでもない。

 中島敦『山月記』では、授業中に級友が「隴西(ろうさい)の李徴(りちょう)は博学才頴(さいえい)(中略)性、狷介(けんかい)、自ら恃(たの)む所すこぶる厚く」と読まされ、「教室のたるい空気が突然変わった」との思い出が。自意識過剰の高校生は川端や三島を朗読するのは照れくさいが、『山月記』を熱く語り合い、暗唱を競ったという。いいエピソードだ。でも、「黙読」にまで進んでこそ「文学」ではなどと思ってしまう私は、「ジュンブンガク」に毒されている?

 『竜馬がゆく』を回し読みした著者に世代の差を感じました。(岩波新書、780円)

読売新聞
2019年8月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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