<東北の本棚>癒やしの小宇宙を案内
[レビュアー] 河北新報
植物のコケが最近、静かな人気を呼んでいる。「見ていると癒やされる」「時間を忘れる」「かわいい」との理由。自然の中を散策しながらコケ鑑賞を楽しむ「コケ旅」の愛好家も増えているという。本著はそうしたコケ旅の初心者に向け、気軽に行ける「絶景コケ・スポット」を集めた入門書的な一冊だ。
トップバッターとして登場するのが、コケの三大聖地の一つに数えられる十和田市の奥入瀬渓流。木々の幹や岩場に約300種類のコケがあるという。ちなみに他の二つの聖地は八ケ岳白駒の池(長野県)と屋久島(鹿児島県)だそう。
奥入瀬渓流は源流の十和田湖が天然のダムの役割を果たし、氾濫が起きにくく水量が安定し、コケが生育、定着しやすいという。コケ観察の現地ガイドまでいるといい、人気ぶりがうかがえる。
このほか秋川渓谷(東京都)法然院(京都府)などのスポットも紹介。「実は乾燥に強く高温多湿に弱い」「水分を吸収すると短時間で形や色が変わる。霧吹きを持参するといい」など豆知識も豊富だ。
種類や形状は千差万別、季節によっても表情を変えるコケの世界は「驚きの小宇宙」と本著。読み進めるうち、自然の中で静かにリフレッシュしたい気分になってきた。
産業編集センター03(5395)6133=1620円。