【気になる!】文庫 『空に牡丹(ぼたん)』
[レビュアー] 産経新聞社
時は明治。江戸、東京からそう遠くない丹賀宇多(にかうだ)村の地主、可津倉(かつくら)家の次男、静助(せいすけ)は幼い頃に見た花火に夢中になる。長じて花火師らを支援し、「可津倉流」の花火作りが道楽に。
「ご一新」の世、人々が何かに心を奪われたように先を急ぐなか、静助は「花火を上げたいなあ」とわが道を行く。だが、時代の波は可津倉家ものみ込み…。
静助と取り巻く人々が織りなす物語はおとぎ話のよう。先頃、直木賞を受賞した著者が平成27年に刊行した作品の文庫化。表紙に山下清画「両国の花火」(部分)もあしらわれ、無性に花火が恋しくなる。(大島真寿美著、小学館文庫・730円+税)