「日本一アウトプットをしている精神科医」が教える、すぐに実践できるインプット術

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学び効率が最大化するインプット大全

『学び効率が最大化するインプット大全』

著者
樺沢 紫苑 [著]
出版社
サンクチュアリ出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784801400696
発売日
2019/08/03
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「日本一アウトプットをしている精神科医」が教える、すぐに実践できるインプット術

[レビュアー] 鈴木拓也

ここ1週間でネットで見たニュースやブログのうち、内容を思い出せるものはいくつあるでしょうか

もしかして、数個しか思い出せなかったかもしれませんね。

私たちは、日々スマホやパソコンから多くの情報を取り入れていますが、ほとんどはすぐ忘れてしまいます。暇つぶしで読んだものはともかく、仕事や生活に役立つと思って読んだものすら、あまり記憶に残っていないものです。

情報は選別しないとほとんど忘れてしまう

こうなってしまうのは、情報の選別ができていないため。いわば、「ダーツの的を見ないでダーツの矢を投げている」と著書で語っているのは、精神科医・作家の樺沢紫苑医師です。

樺沢医師は、約30冊の著書のほか、毎日のメルマガを14年間続けるなど、「日本一アウトプットをしている精神科医」として知られています。それを続けるために、インプットは厳選し、例えばネットからの情報収集には1日15~20分しかかけないそうです。

まさにインプットとアウトプットの達人ですが、今回は樺沢医師の最新の著作『学び効率が最大化する インプット大全』(サンクチュアリ出版)から、インプットの秘訣をいくつか紹介しましょう。

月3冊の「深読」で精度の高いインプットを

書物はインプットの素材としてすぐれたものですが、やみくもに多読しても記憶に残らないのでは意味がありません。

まず、樺沢医師がすすめるのは、「月10冊」より「月3冊+アウトプット」。1冊読むたびに、そこから得た気付きや感想を、家族・職場の人、友人に話す。できれば「10分でその本の内容を人に説明できる。あるいは、飲み会でその本の話題で10分~20分くらい盛り上がれる」というレベルを目指します。また、SNSやブログに読書感想を記すのもおすすめ。それによって、本の内容が身につきます。

樺沢医師は、これを「深読」と呼んでいます。誰かに話し、ネットに公開するというプレッシャーがあることで、集中力・記憶力が高まる神経伝達物質ノルアドレナリンが分泌され、内容が記憶に定着されやすくなるわけです。

ところで、1か月に読む3冊は、なんでもよいわけではありません。自身にとって真に役立つ本、極端な話、人生に変化を起こすほどの「ホームラン本」を選ぶべきだと述べます。ふだん本を読んでこなかった人は、読書家・専門家が推薦する良書を参考にします。多少とも本に親しんでいる人は、「書店で現物を見て選ぶべき」だとも。ネットだけだと細かい部分が確認できず、はずれとなる可能性があるからです。

そして、読む時に注意したいのが、「ニュートラルに読む」、「バランスよく読む」、「効率よく読む」の3点です。

ニュートラルに読む:自分が内心信じている情報を支持してしまう「確証バイアス」は避け、先入観はいったん外し「素直」な気持ちで読んでいきます。

バランスよく読む:例えば、糖質制限ダイエットを論じた本を読む時は、糖質制限の賛成派、反対派、中立派の立場の人が書いた3冊を読む「3点読み」で。その余裕がない場合、賛成派と反対派の2冊を読む「2点読み」を心がけるようにします。

効率よく読む:まず目次を見て、関心のあるテーマをピックアップし、その部分を読む。また、パラパラとページをめくりながら、重要なポイントを斜め読みし、だいたいの内容をつかみます。樺沢医師はが「パラパラ読み」と呼ぶこのテクニックで、改めて冒頭から熟読する時は「圧倒的に深く読める」ようになり、読書スピードも倍くらいになるそうです。

音楽を聴きながらではインプットの効率はガタ落ち

本書は、「聞く」インプットにも1章が割かれており、講義やセミナーを効率的に聞く方法などのほか、音楽・自然音を聞くことについても説かれています。これ自体はインプットではありませんが、インプットの効率を高める・低下させるものとして、詳しく解説されています。

まず、音楽を聴きながらの勉強・頭脳労働は、「著しく効率が下がる」ことが、多くの研究結果から明らかになっているそうです。特にテンポの速い曲は、無音と比べて記憶力テストの得点が約50%も減少。また、歌詞のある曲を聴くと言語脳を使い、記憶・読解も言語脳を使いますが、人間の脳はこうしたマルチタスクはできません。好きな曲を聴きながらの勉強がはかどるような気がするのは、単に脳内でドーパミンが分泌され楽しい気分になるからにすぎないそう。

ただし、速いテンポの曲を聴かせた後で短期記憶の課題を与えた研究では、短期記憶に必要な左下前頭回が活性化し、短期記憶が向上するという結果が出ています。この結果から樺沢医師は、「仕事や勉強の開始前に、テンポの速い曲や、自分の好きな曲を聴いてテンションを上げるのは、脳科学的に効果がある」とします。

また、無音に近い環境より、少しの雑音・自然音を聞きながらのほうが、学習効果が高まる人もいて、このタイプだと静かなカフェで仕事や勉強をするのもありです。さらに、あまり頭を使わない単純作業やエクササイズについては、BGMはプラスに働きます。

テレビも貴重なインプット源になる

日本人は、ネットと接する時間が増える一方、テレビの視聴時間は減っています。ですが、それでも現役世代は1日あたり約2時間をテレビの視聴に費やしているというデータがあります。

「時間の浪費」とみなされることもあるテレビですが、これも工夫次第で「貴重なインプット源」にできると、樺沢医師は述べます。

基本は、本と同じく「アウトプット前提」で見る。「自分にとって必要な情報、役立ちそうな情報にアンテナが立ち、“ザル見”から“集中力高く見る”に切り替わる」からです。そして、視聴中に「これはおもしろい!」と思った瞬間にメモをとります。これは、SNSやブログ、雑談のネタにもなります。

樺沢医師は『情熱大陸』が好きで、心に響く言葉があれば、すかさずメモしてTwitterに記したり、話を膨らませてメルマガに書いたり、後で本のネタにもなることもあるそうです。「アウトプット前提」で見るか否かで、これほどの違いが生まれるのです。

テレビは、マーケティングに役立てることもできます。その理由として「“大衆”“みんな””多くの人”を対象にしているので、“大衆の心理”に近付くことができる」点が挙げられています。この視点で見る場合も、必ずメモをとるようにします。

そして、テレビを効率的に見るやり方についても言及があります。1つは、見たい番組を録画して後で見ることで、見たくない番組まで惰性で見続けてしまう誘惑を避けるやり方。もう1つは、放送終了後の番組を視聴できる民放主要局のポータルサイト「TVer」を活用して、スキマ時間やエクササイズの最中に見ることです。

こうした手段で、本当に見たい番組に絞りこむことができ、テレビがインプットの素材としてより役立つものとなります。

『学び効率が最大化する インプット大全』には、こうしたインプット術以外にも、ネットからのインプット、メンターに学ぶ、上手に遊ぶ、旅に出る、お酒を飲むなど、多種多様な80のトピックと、「インプット力を飛躍させる」応用的な方法が掲載されています。

分厚いですが、しっかり読み込んで実践すれば、得るものは大きいおすすめの1冊です。

Image: Shutterstock

Source: 『学び効率が最大化する インプット大全』, TVer

メディアジーン lifehacker
2019年8月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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