エロ雑誌100冊をオールカラーで紹介! 貴重な大衆文化アーカイブ

レビュー

10
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日本エロ本全史

『日本エロ本全史』

著者
安田理央 [著]
出版社
太田出版
ISBN
9784778316747
発売日
2019/07/02
価格
4,070円(税込)

書籍情報:openBD

終戦直後からの100冊を紹介 貴重な大衆文化アーカイブ

[レビュアー] 都築響一(編集者)

 24時間営業問題やセブンペイ挫折など、2019年はコンビニ業界が揺れた一年として業界史に記録されるだろうが、もうひとつ大きな、しかしすでに忘れ去られた感があるのが「エロ雑誌完全撤去」問題だ。エロ雑誌編集者に聞くと、コンビニで売ってもらえるかどうかで発行部数がゼロひとつ違うそうなので、実質的には2019年がエロ雑誌文化の終焉、ということになるかもしれない。

 執筆からAV監督までエロの現場に長く身を置いてきた安田理央の新刊『日本エロ本全史』は、題名どおり終戦直後のカストリ雑誌から始まったエロ本文化を、雑誌の創刊号に絞って100冊、オールカラーで紹介した貴重な大衆文化アーカイブ。1946年から2018年までほぼ70年間にわたって、何千万人の男たちの性欲と、何千軒の書店経営を支えてきたエロ雑誌という存在が、どういうふうに世に出て、どういうふうにいま消えようとしているのか、毒々しいデザインの表紙が雄弁に語ってくれる。

「エロ雑誌の場合、売れないとあっさりと路線変更をすることが多い。一般誌のようなプライドはそこにはない」と安田さんは書いていて、それがまたエロ雑誌が時代を映す鏡ということでもある。

 引導を渡したのはコンビニかもしれないが、「これはもう終わりだな」と思ったのは、コンビニの奥に並ぶエロ雑誌がDVD付きのAVメーカー広報誌に成り下がったときだった。自分たちで取材し、撮影して原稿を作るのではなく、AVの宣材をそのまま掲載した、記事に見せかけた広告ページ。そういう意味でエロ雑誌は圧力によって潰されたのではなく、自壊したのでもある。そのあたりの末期状態も、筆者自身の体験を交えて語られていて、これがエロ雑誌史にとどまらず、フリー編集者という職業がほんとうにフリーだった時代の、貴重な証言であることがわかってくるのだった。

新潮社 週刊新潮
2019年8月29日秋初月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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