<東北の本棚>生きていくこと支える

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現場から伝える私の災害看護論

『現場から伝える私の災害看護論』

著者
宮城恵里子 [著]
出版社
看護の科学社
ISBN
9784878041129
発売日
2019/03/30

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>生きていくこと支える

[レビュアー] 河北新報

 東日本大震災後、関東圏から駆け付け、東松島市などを拠点に被災者に寄り添い続けた60、70代のベテラン看護師たちがいた。「一般社団法人日本て・あーて推進協会」のメンバー。事務局として奔走した著者が、看護師の役割とは何かを改めて論じる。
 中長期ケアの実践として、仮設住宅や復興住宅で開いた「なでしこ茶論」は、2011年9月から15年3月まで、54回を重ねた。多様な人々と接してきた長年の経験、豊富な知識を生かし、参加者とコミュニケーションを取りながらケアを進めた看護師たち。爪切りから始まるフットケアやハンドケア、趣味を生かした茶道、腹話術など多彩な企画を実施し、生活不活発病の予防や心身のケアに努めた。
 「被災地でのこれからの暮らしを整え、生命力を回復させる支援は、看護師の全人格を投入したケアに尽きる」。著者は、日本て・あーて推進協会の代表で、当時職場の上司だった川嶋みどり氏の言葉を引用しながら、茶論の活動を総括した。
 被災者は親しい人を失い、家屋や土地を失い、希望や勇気を持てない状況に追い込まれる。生存を脅かされている状態と言っても過言ではない。その中で、著者は看護の心得として(1)ほめ言葉を取り入れる(2)できるところを探す(3)明るい表情で接する(4)ユーモアセンスを持つ-ことなどを上げる。「セルフケアできなくなった生活行動を援助して、生きていくことを支える看護師は、憲法25条の生存権を守る担い手である」。活動を通して導き出した著者の結論は、看護師が被災者支援において重要な役割を担うことを物語る。
 著者は1960年、鹿児島県生まれ。千葉大大学院看護学研究科修了。医療法人財団健和会(東京)の病院で総看護師長などを務め2018年に退職。
 看護の科学社03(3943)0244=1944円。

河北新報
2019年8月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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