『世話を焼かない四人の女』
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私の目指す人
[レビュアー] 麻宮ゆり子(作家)
出身は埼玉だが、私は京都、愛知、静岡、東京と各地を転々としながら暮らしてきた。
そもそもどうして地元を遠く離れたのかというと、「この人たちと一緒にいたらヤバイ」と子供ながらに感じる人が周囲に多くいたからだ。先祖代々、同じ場所にぎゅっと集まって暮らしている人がほとんどの田舎町だった。
うちは本家だからと、しょうもない理由で分家の人を見下すおばあさん。医者やお金持ちの家の子ばかり露骨にひいきする学校の教師。自分の子にはめっぽう甘いくせに、他人の家の子には平気で説教してくる意地悪な親。昼休みになると職員同士がつかみ合いの言い争いをしている小さな役場。近所の人と喧嘩になると、「うちの息子は国鉄に勤めているんだ」(JRは国鉄と呼ばれていた)と必ず言うおばあさん。そういえば、おじいさんと呼ばれる年齢の人にあまり長生きする人はいなかった。
もちろんすべてがそんな人ばかり、というわけではない。しかし所有地の大小や家柄、子供、就職先といった自分以外のものを使って虚勢を張る人が多かった。しかも住人同士仲が悪い。
どこにでもそういう人はいるのかもしれない。しかし陰湿な噂話や罵り合いをくり返す町の大人たちを目にし、私は心底うんざりした。だからいろんな土地を見て、さまざまな人を知って、自分磨きを忘れずに……と具体的に思ったかどうかは忘れたが、町を出たのは確かである。
おかげで今、各地にいる私の友だちは、みんなさっぱりしていて優しい。どこの出身だからどうというのはない。きりっとしていて、目の前のやるべきことをしっかりやって、自律している。
どうやら私は、自律した人に出会いたい一心で各地を転々としてきたところもあるようだ。そんな私の目指す人の姿が、今回の本に出ているといいなと思っている。