木嶋佳苗、座間9人殺害事件の犯人が住んでいた間取りの不思議な共通点 事故物件芸人とイヤミス作家が語る、ヤバい部屋
対談・鼎談
『事故物件怪談 恐い間取り』
書籍情報:openBD
【恐怖の事故物件対談】真梨幸子×松原タニシ 怪奇は部屋に現れる
[文] 新潮社
■廃火葬場で鈴の音が聞こえた
松原 イベントに来てくれた一般の方が、僕と握手した瞬間に眼鏡を飛ばしたことがあるんですよ。
真梨 眼鏡が飛ぶ?(笑)
松原 イベントだから100人ぐらい目撃してて、ウソやろ? ってなって。
真梨 だって眼鏡ってしっかり耳にかかってますよね。
松原 そしたら2か月後のイベントでまたそのおっちゃんが来てくれたんです。おっちゃんは睡眠時無呼吸症候群で、自分の寝てるときの音を録ってきてくださいって医者に言われて、ボイスレコーダーを枕元に置いて寝てたらしいんですよ。で、眼鏡飛んだ日の晩のレコーダーに、自分の歯ぎしりと一緒に女の声が入ってるんですって言って。
真梨 何それ。
松原 その声がいまここにあるんです(とスマホを取り出す)。
真梨 えーやだ。
松原 もう、再生しちゃいましたけど。
真梨 歯ぎしりってこんなにすごいんですね……あれ?
(録音には歯ぎしりの音に重なるように女性の声が入っている)
ちょっと怖い怖い怖い。やだ。何なんだろう?
松原 おっちゃん曰く、タニシさんに憑いてる女の人がこっちまで来てくれて、心配してくれたんじゃないですかみたいなことを言うてました。
真梨 それ絶対みゆきちゃんじゃないですか? 心配してくれてるならよかったけど、やっぱり怖い。今、一番怖い。ビジュアル的なものって気のせいですむけど、聴覚はごまかしが効かないじゃないですか。ちょっと私、厄除けにこれ持ってよう(と、赤い布を握りしめる)。
松原 あ、それは……。
真梨 さっきの赤パンの切れ端をお店の人がくれたんですよ。端切れでも結構、力があるらしいので。
話を変えましょう。7月に新刊を出されるんですよね。本の中でもいろんな場所を巡っていらっしゃるって聞きました。
松原 そうです。物件というよりは心霊スポットですね。事故物件に住んでいるのがもう日常で、自分の中でニュースにならないんですよね。生活になってしまって。どうせだったらいろんなところに行きたいなと思って。
真梨 一番やばかった場所はどこですか。
松原 台湾で鈴に追っかけられました。
真梨 鈴?
松原 鈴の音です。もと火葬場だったところに行きまして。
真梨 火葬場っていうだけでも怖いのに、今は使われてないってことは、よどみがどんどん蓄積されてそうじゃないですか。
松原 真夏の台湾ってめっちゃ暑いんですけど、廊下に入ったとたんに鳥肌がたって、一緒にいた後輩の携帯が誤作動を起こして。
真梨 電子機器ってすぐそういうこと起こりますよね。
松原 で、その鈴の音がここに(とスマホを指さす)。
真梨 いやー、もう、ちょっと怖いんですけど、私。
松原 でも、画像じゃなくて音だけですよ。あ、音が怖いのか。
真梨 何か嫌な予感がするんですけど。すごく。
松原 じゃあ、やめときますか。
真梨 ちょっと、うちの猫、大丈夫かな。心配になってきた。
松原 確かに、動物が守ってくれることってあると思います。以前、僕に「事故物件に住め」と言ってくれた先輩の北野誠さんから夜に電話がかかってきて、ほんのちょっとしたことで結構怒られたんですよ。今の電話なんやったんやろうな、と思ってたら、次の日の朝9時にまたかかってきて、誠さんが「タニシ、昨日お前を怒って悪かった」って謝ってきたんです。
真梨 どうして?
松原 「お前を怒ってから、実家の犬が急に危篤になったんや」って。
真梨 あははは。
松原 たぶんお前に怒ったから、お前に憑いてるもんを俺のとこに飛ばしてきたんやろ、って。
真梨 それもきっと、みゆきちゃんだと思う。
松原 で、今から悪いけど風呂に入って清めてくれ、それからお前に憑いてる何かに「北野誠を許してくれ」って3回唱えて頼んでくれって言われて。その後、犬は一命を取り留めたそうです。
真梨 動物ってそういうところがありますよね。もしかしたら北野さんの楯になってくれたのかも。えー、でも怖い! 松原さん、今私に怒ったりしてないですよね?
松原 大丈夫ですよ。パンツ買ってきてくれはったし。
真梨 そうか、やっぱり買っておいてよかったです(笑)。
***
真梨幸子(まり・ゆきこ)
1964年宮崎県生まれ。多摩芸術学園映画科卒。2005年『孤虫症』でメフィスト賞を受賞、デビュー。2011年に文庫化された『殺人鬼フジコの衝動』がベストセラーに。2015年、家と引っ越しをモチーフにしたサイコミステリ『お引っ越し』を発表。現在は家にまつわる実話怪談風ミステリ「フシギ」シリーズを執筆中。近著に『初恋さがし』などがある。
松原タニシ(まつばら・たにし)
1982年兵庫県生まれ。ピン芸人。2012年にテレビ番組の企画で事故物件に住んだことをきっかけに、以降は大阪や東京などの事故物件を実際に借りて生活している。2018年、その顛末を記した『事故物件怪談 恐い間取り』を上梓、話題を呼ぶ。日本や台湾の不思議な場所を巡った体験談をまとめた新刊『異界探訪記 恐い旅』が発売中。