サンリオピューロランドをV時復活させた女性リーダーを支える「25の思考」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『逆境に克つ!- サンリオピューロランドを復活させた25の思考- 』(小巻亜矢 著、ワニブックス)の著者は、株式会社サンリオエンターテイメント代表取締役社長、サンリオピューロランド館長。
1983年にサンリオに入社後、結婚退社、出産などを経て関連会社に復帰。
その後、2014年にふと訪れたサンリオピューロランドが活気を失っていたことにショックを受け、エンターテインメントについては素人だったにも関わらず再生を提案。
サンリオピューロランドの顧問となり、わずか2年でV字回復させたという実績の持ち主です。
ただ、決して自身の実力がそうさせたわけではないとも記しています。
私が何かをしたというわけではないのです。そもそも、私はテーマパークの素人。私にできることなど、限られています。
ただ、サンリオピューロランドが、本来持つ魅力を取り戻し、磨きをかけてきたのと同じように、ここで働く仲間にも、本来持つ力を、遠慮なく思う存分発揮してもらえるように、少しだけお膳立てをしたに過ぎません。(「はじめに」より)
つまり本書では、そんな気持ちをもとに行ってきたことを、さまざまな角度から明かしているわけです。
きょうは「キャリア」に焦点を当てた第5章「キャリアは、自分のペースで積めばいい」のなかから、2つの考え方を引き出してみたいと思います。
Q.いまの仕事がまったくおもしろくありません。
常に仕事がおもしろく、やる気に満ちて毎日が充実しているという人は、それほど多くないかもしれない。著者はそう指摘しています。
誰にでも、「仕事いやだな、つらいな」と思う時期があるものだということ。
事実、著者も仕事は好きであるものの、時期で区切ってみると、つらいと感じる時期も少なくなかったそうです。
しかし「やめたい」というところまで行ったことがないのは、仕事をさせてもらえることは「ありがたい」と心底思っているから。
そして、そんな立場からのアドバイスは、「悩んでいるときは、やめないほうがいい」ということだといいます。
もちろん、「もう絶対に無理」というタイミングを超えて我慢してしまうと、身体に拒否反応が出てしまうかもしれません。そういう意味では、一概に「3年は我慢してやってみましょう」ともいえないというのです。
しかし、少なくとも「絶対に無理!」と思うまでは、少しがんばってみるべきではないかという考え方です。
なぜならそうすれば、おもしろみ、達成感、自分の成長などを感じることができるようになる可能性があるから。
そのため、仕事のおもしろさ、やりがい、なんの役に立っているか、などを探すような気持ちで挑戦すべきだということ。
逆に、おもしろくないところ、いやなところばかりを考えていると、マイナスのスパイラルに入ってしまいます。
しかし100%おもしろみや楽しさを感じることができないまま続けるのは、当然のことながらつらいものです。
過去には自分も同じようなことで悩んだ経験があるからこそ、かつての自分のような人に対しては、「そこで103%だけ、がんばって」と伝えたいのだそうです。
任された仕事に100%の成果で応えるだけではなく、相手の期待値を少し超えることが大切だということ。
とはいえ大きなことをしなければならないわけではなく、お客様にその日のうちにお礼のメールを書くとか、報告書の提出時にメッセージを添えた付箋をつけるとか、小さな努力でOK。
そうやって、おもしろくないと思っていた仕事を工夫しながら乗り越えようとすると、やがて自信につながっていくわけです。
また、その3%の努力を見ていてくれる人は必ずいるもの。そして、そういう人はいつか必ず味方になってくれるはず。
そこで、「なんでこんな仕事を」という憤りのエネルギーを、がんばるエネルギーに変えるべきだというのです。
そうすることが、自分自身にも会社にも、世の中にもプラスになるはずだから。
A.本当にやりたいことを見失わず、少しの努力を続けていれば、自信が生まれ、味方もできます。今やっていること、ではなく、仕事をしている自分、を好きになって下さい。
(92ページより)
Q.やりがいを感じていた仕事から、外れることになってしまいました。
いうまでもなく、異動を命じられたときには寂しさやもどかしさを感じるはず。
もしかしたら、いままで自分がやってきたことを否定されたような気持ちになるかもしれません。
とはいえ、組織に異動はつきもの。「外された」と考えず、「卒業して次にステージへ」と考えてみてほしいと著者はいいます。
寂しさを次の仕事への期待に変え、自分の新しい仕事に集中したほうが、自分にとっても会社にとってもプラスになるからです。
仕事の本質は業務そのものだけではなく、その業務を通して、自分もまわりも成長すること。そこで異動していくにあたっては、自分がその仕事で得た知識や知恵などを振り返ってみるべきだといいます。
そしてそのときに、「ありがとうリスト」をつくることも著者は勧めています。引き継いでくれる人にも「ありがとう」の気持ちを持って業務を引き渡すということ。
そうすれば、その仕事に込めていた情熱も伝わるわけです。
同じ仕事にやりがいを感じられるか、感じられないか。そこに関しては、仕事そのものよりも大切なことがあると著者は主張しています。
会社が向かう先を明確に示せているか、理念が浸透しているか、そして所属している会社に対し、愛があるかどうかで決まるというのです。
会社が好きなら、そして自分の業務がなににつながるのか、誰の笑顔につながるのかを認識できていれば、どんな仕事にも誇りを持って取り組めるということ。
著者自身も、そんな気持ちを忘れないようにして仕事に臨んでいるそうです。
なお、もし新しい仕事に魅力を感じなかったとしたら、会社に入ったときの気持ちを思い出し、会社の好きなところも思い出し、自分の仕事がなにに役立っているのかを実感してみるべきだともいいます。
A.それまでの経験を活かして、次の仕事を楽しんでください。どの仕事も意味のある、自分を成長させてくれる大切な仕事だと思います。
(106ページより)
Q&A形式になっているので、気負うことなく読み進めることができるはず。なんらかの逆境に直面している人にとって、大きな力になってくれそうな一冊です。
Photo: 印南敦史
Source: ワニブックス