コヘレトの言葉を読もう…小友聡著

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コヘレトの言葉を読もう

『コヘレトの言葉を読もう』

著者
小友 聡 [著]
出版社
日本キリスト教団出版局
ジャンル
哲学・宗教・心理学/キリスト教
ISBN
9784818410275
発売日
2019/03/20
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

コヘレトの言葉を読もう…小友聡著

[レビュアー] 宮下志朗(仏文学者・放送大特任教授)

 「なんという空(むな)しさ、すべては空しい」という一節や、「日の下に新しきものなし」の箴言(しんげん)、あるいはヘミングウェイ小説のタイトル『日はまた昇る』、いずれも旧約聖書の一書「コヘレトの言葉」に由来する。「空しい」を38回連発しており、コヘレトなる説教者によるニヒルでちぐはぐな「知恵文学」とのイメージを抱きがちだ。

 ところが、「ダニエル書」など来世に重きを置く黙示思想や終末論へのアンチテーゼとして読めば、一貫しているという。コヘレトは現世を肯定し、現在にこだわる。生まれる時、死ぬ時……愛する時、憎む時などすべて定められた「時」があるが、「神のなさる業」の時は人には不可知。先が見えず、いつか必ず死ぬからこそ現在を生きよと教えられ、もやもやが晴れた。

 たとえば「欲望が行きすぎるよりも、目の前に見えているものが良い」と述べてから、「これまた空しく、風を追うようなことだ」とするコヘレト流の付言も、空しいからこそ今を充実させよ、と解すればいい。でも「朝、種を蒔(ま)け、夜にも手を休めるな」とは厳しいお言葉。(日本キリスト教団出版局、1400円)

読売新聞
2019年8月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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