日露戦争での活躍で名高い陸軍大将、児玉源太郎(1852~1906年)。台湾総督、陸相、内相を歴任し、対露開戦後は満洲軍総参謀長として現地で作戦指導に当たった。一般には司馬遼太郎『坂の上の雲』が誇張気味に描いた天才戦術家のイメージが定着しているが、その真価はむしろ、国家全体を見渡し将来を正しく予測した上で必要な改革を断行する卓越した組織指導者の面にあった。
203高地関連をはじめとする逸話や伝説の数々を、実証的見地から否定する驚くべき指摘も多い。新史料を活用して通説を大幅に修正した現時点での決定版評伝だ。(作品社・3400円+税)
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2019年9月1日 掲載
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