座右の銘はない 石毛直道著

レビュー

2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

座右の銘はない

『座右の銘はない』

著者
石毛 直道 [著]
出版社
日本経済新聞出版社
ジャンル
社会科学/民族・風習
ISBN
9784532176693
発売日
2019/07/17
価格
1,980円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

座右の銘はない 石毛直道著

[レビュアー] 通崎睦美(木琴奏者)

 僭越(せんえつ)ながら、著者の座右の銘は<まあ、なんとかなるわい>なのではないか。

 国立民族学博物館の創設期からかかわり、第3代館長を務めた文化人類学者の自叙伝。実の伴う鼻っ柱の強さに、すかっとする1冊。

 七五三詣(まいり)で、樽(たる)酒を柄杓(ひしゃく)で一気に飲み干す酒飲み、高校合格祝いに盛りそば20枚以上平らげる大食いの才能が、自ら切り開いた「食」の研究という学問分野で、遺憾なく発揮される。食にまつわる武勇伝は、枚挙に遑(いとま)がない。

 少年期から<興味をもった事柄については、年上の偉い先生でも、ものおじせずに近づいて教えを請う性癖>があった。この癖は、アフリカの僻地(へきち)における「居候方式」での調査にも、館長時代の政治家への陳情にも通じるもの。強い意志を持ちつつ、自然体で人やモノの懐に入っていく。

 当時の京都の「学割」は「学者割引」だった話、今西錦司、梅棹忠夫という分野を超えた知の巨人とのおつきあい、食物史学者・篠田統の蔵書整理のエピソード。あとがきで妻へ<ありがとさん>と記すあたり、どれもユーモアと愛が溢(あふ)れている。(日本経済新聞出版社、1800円)

読売新聞
2019年9月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加