序列を超えて。 藤島大著 鉄筆文庫/ラグビーの世界史 トニー・コリンズ著 白水社

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序列を超えて。 ラグビーワールドカップ全史 1987-2015

『序列を超えて。 ラグビーワールドカップ全史 1987-2015』

著者
藤島 大 [著]
出版社
鉄筆
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784907580209
発売日
2019/06/27
価格
1,056円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

ラグビーの世界史

『ラグビーの世界史』

著者
トニー・コリンズ [著]/北代 美和子 [訳]
出版社
白水社
ジャンル
芸術・生活/体育・スポーツ
ISBN
9784560097083
発売日
2019/06/25
価格
6,380円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

序列を超えて。 藤島大著 鉄筆文庫/ラグビーの世界史 トニー・コリンズ著 白水社

[レビュアー] 鈴木洋仁(社会学者・東洋大研究助手)

 間もなく日本で開幕するラグビー・ワールドカップ(W杯)への期待が高まる2冊を読む。

 4年前の大会で日本は南アフリカを破った。その驚きを藤島大は『序列を超えて。』の表題コラムに綴(つづ)る。序列のトップクラス・南アを、より下位の日本が破るのはどれほどの快挙か! 1987年の第1回以来全てのW杯を取材した藤島の同書から痛感する。

 「ラグビーとは愛と誠なのだ」と述べる藤島の筆致は、選手・コーチとしての経験に裏打ちされているから試合結果の解説にとどまらない。人種隔離政策アパルトヘイト終了後の南アが優勝した95年W杯を、当時の同国大統領「ネルソン・マンデラの大会」と呼び、愚直なプレースタイルと手探りの国民融和を重ね合わせる。藤島は楕円(だえん)球を通じて読者に世界を見せる。

 この競技は、1823年に英国のパブリックスクール・ラグビー校で、エリス少年がフットボールの試合中に球を手でつかんで走った事件が起源と言われる。けれど証拠はない。ただ、同国の歴史家トニー・コリンズは、それをあからさまには否定しない。彼による『ラグビーの世界史』は丹念に集めた資料を元に、約500頁(ページ)の厚さで競技の歩みを語る。起源の伝説は、そのひとコマに過ぎず、他にも謎は多い。

 たとえば、なぜラグビーボールは楕円形か。あるいはスクラムとは何か。コリンズは、そうした謎解きをラグビーが主役の長編小説のように広げ近代世界史をも語る。手練(てだ)れの語り手だ。北代美和子訳。

 ラグビーの近代化は、プロとアマ、つまり労働者と上流階級の境の消失によって進む。にもかかわらず日本は未(いま)だにアマチュアリズムの伝統にとらわれている。だから国際舞台での序列が低いのだ、とコリンズは喝破する。

 その日本は地元開催で再び序列を超えられるのか。競技場では藤島の本を、自宅でコリンズの本を頼りにして、選手の躍動を満喫したい。

読売新聞
2019年9月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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