社会学、あなたはどこから?――『社会学はどこから来てどこへ行くのか』スピンオフ

対談・鼎談

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社会学、あなたはどこから?――『社会学はどこから来てどこへ行くのか』スピンオフ

[文] 有斐閣

ジェンダー・世代

齋藤 女性研究者支援が、子育て支援だけするっていうのも、けっこうイラついたり。

永田 そうそう。イラつくよな。やっぱり、特にうちらの時代なんかは、今おさいさんが言った支援もまだなかったから、まず結婚すると第一線もう引いたんだなっていう感じで。子どもができたら「非常勤切るんですね。じゃあさようならですね」みたいな感じの流れがね、まだまだあったから。
 わたし、結婚したのもしばらく黙っていたもん。相手が全然同業者でも何でもないから黙っていればわからなかったし、披露宴とかもやらなかったし。研究に関係ない人には言って、小さなパーティーはやったけど。たとえば先生呼んでスピーチとか、そういうようなかたちのオフィシャルのやつはやらなくて。結婚したことで、「キャリアを優先しない人生を選んだんだ」って絶対思われたくなかったからね。それもあったから子どもを後回しにしていて、結果的によかったのか悪かったのか……みたいなね。
 こういうところでキャリアをうまく乗せられなくて、思うような形で表に出られない人って、たぶんたくさんいると思う。

齋藤 いると思う。

永田 うちらの世代「団塊ジュニア」の女性研究者って、体感的には少ない気がする。家族研究者にはかなりいるのよ。なんだけど、それ以外の分野で、特にインターネットとか使って情報発信していて、自分は研究者としてこういう感じで、こういうスタンスでやっています、みたいなのをちゃんと言っている同年代の人って。もちろんいるだろうけど、ちょっと見つけにくいかなって。

齋藤 人口的にボリュームがあるにもかかわらずね。

永田 そうそう。出産・結婚を優先した人が多かったと思うんだよね。

齋藤 そうですね。でもたしかに、博士課程の同級生があまり就職してない。

永田 わたしもそう。博士持ったまま、あるいは博士をとるのを残したまま行方知れずみたいなやつだよね。

齋藤 そうそう。

永田 文部科学省の調査では就職も進学もしてない博士が2割くらいいると言われているけど、全体の博士号のボリュームの中では、医・薬学や工学が多いし、それに比べたら社会学って少ないんだよね。
 でも、領域やジェンダー別にみてみたら、社会学の女性って「行方知れず」がけっこういるんじゃないかなっていう気がするよね。おさいさん、よくぞご無事で(笑)。

齋藤 でも、子どもができていたら、やめていたんかなっていうのもあるんですよ。

永田 それはあるかもしれないね。でも、もちろん子どもを持って、早々に就職してっていう人もいるからね。

齋藤 そう。だから、いろんなかたちがあるなと思いますね。子育てしながら研究者やっている人のしんどさも絶対あるやろなっていうのは見ていたらわかるし。

永田 そうそう。しかも研究者って、特に夫婦で研究者だと、一緒に住んでいない人もいるからね。勤務地が違ったりとかしてね。

齋藤 そうそう。ワンオペで働いてっていう人もいるから。

永田 いっぱいいるからね。それ考えたら何がいいなんて言えないんだけど。やっぱりキャリア形成するのって難しいよね。

齋藤 難しい。

永田 とかいうと、若者が出産・結婚を躊躇するかもしれないけどね。

齋藤 時代は変わりつつ。

永田 時代は、でもだいぶ変わると思うよね。

齋藤 変わってきた。

永田 それはそう思う。

(2019年4月13日収録、聞き手:四竈佑介)

有斐閣 書斎の窓
2019年9月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

有斐閣

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