妹の出産を機に、夫が子供をほしいと言いだし慌てる妻。妊活に積極的な妻と尻込みする夫。子供が嫌いな独身OLが取った意外な行動…など、実在しそうな5人の女性を中心にした短編集。売れ残ったパンから、幼少期の苦い思いを想起させる切ない表現がある一方、どの登場人物も温かいまなざしで見守る。
自分の未来に子供はいるのか、いないのか。直木賞候補になった『じっと手を見る』『トリニティ』同様、著者が提示する選択は自らで打開できるものばかりではない。少子化問題という大上段ではなく、読み手に考えることを求める。(KADOKAWA・1400円+税)
-
2019年9月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです