「死ぬんじゃねーぞ!!」 中川翔子著 文芸春秋

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「死ぬんじゃねーぞ!!」 いじめられている君はゼッタイ悪くない

『「死ぬんじゃねーぞ!!」 いじめられている君はゼッタイ悪くない』

著者
中川 翔子 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163910727
発売日
2019/08/08
価格
1,320円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「死ぬんじゃねーぞ!!」 中川翔子著 文芸春秋

[レビュアー] 山内志朗(倫理学者・慶応大教授)

 人間はなぜいじめるのだろう。そしてなぜ人は死にたくなったりするんだろう。しょこたん(著者の愛称)は中学時代の過酷ないじめを耐えて生きのびた。その記録がこの本だ。

 「キモい」、この一語が仲間外れを作ってしまう。スクールカーストなんか作るなと誰でも思う。でも、イジメの問題はなくならない。

 しょこたんのメッセージは、「イジメにあっても、生きろ!いじめられている君はゼッタイ悪くないのだから」。シンプルだけど、強く響く。

 クラスの中には、守らせる人がいる。学級委員長だ。そして、それ以外に、雰囲気を作り、仕切る者がいる。ランキングをつけて、仲間外れを決める。学校は、見て見ぬふりをする。クラスをまとめる「ボス」を求めるから。

 空気が読めなかったり、ちょっと変わったことをしたりしただけで「キモい」と言われ、輪から外されてしまう。しょこたんもそうだった。

 さなぎが蝶(ちょう)に羽化する前の段階は弱くて傷つきやすい。学校は、さなぎのような生徒達(たち)が変身していく段階を守ってやる空間だ。

 学校が守らなければ、イジメから避難するために、不登校は緊急の正しい手段となる。

 不登校は社会的問題だ。それを減少させるにはどうすればよいかという、「正論」だけでは問題は解決しない。一人一人に届かないから。

 この本は、未来に向かう道筋を示してくれる。何かを育てるのに大事なのは「好き」という気持ちだ。「好き」という気持ちは何に向けられようと大事にすべきだ。

 この本は「好きという気持ち」をどう育てるのか教えてくれる。生きている限り、「好き」という気持ちが人を育てる。

 しょこたんの涙で書かれた本だ。「死にたい夜を越えて未来を生きる」者からのメッセージだ。「死ぬんじゃねーぞ!!」という熱い強い激しい思いが、届いてほしい。

読売新聞
2019年9月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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