『愛なき世界』
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愛なき世界
[レビュアー] ほんのいえ宮脇書店越谷店(書店員)
本屋さんでひときわ目立つブルーバックにした植物をあしらった見事な装丁。
どっぷりと肩までつからせてもらった気分になる学術的な研究の話も、三浦しをんの独特なユーモアが、お堅いイメージの理系の世界へとやさしくいざなってくれる。作者の徹底した探究心が、物語に説得力をもたらしてくれています。かつて「舟を編む」で辞書作りの世界を描いた深掘り感が今回もたっぷりと漂っている。ストーリーに大きな盛り上がりがなくても、静かにほのぼのと時間が流れていく小説が成立するんだなとあらためて感じさせてくれる。これもひとえに作者の力量なのでしょう。次のテーマが何になるんだろう、と先走った期待感さえわいてくる。登場人物にキャラが立っていて、映画化も十分にありえるでしょう。