<東北の本棚>最善の保育を求め実践
[レビュアー] 河北新報
「子ども時代を子どもらしく過ごす」ことをモットーに、幼稚園「東仙台シュタイナー 虹のこども園」(仙台市宮城野区)を運営する園長が、1年の暮らしぶりをつづり、生きる力の根源を育むための実践を語る。生き生きとした子どもたちの表情と、それを見守る著者の温かいまなざしを感じる。保育とは何か、子どもにとっての最善は何かを、私たちに問い掛ける。
第1部「『いのち』を育む幼稚園」は、河北新報夕刊で2017年8月~18年7月に連載したコラムを加筆修正した。
給食は、魚や肉がない玄米菜食が基本。食材や調味料は、有機無農薬を使う。「地元の季節の野菜を中心とした素材の味を存分に味わうことは、味覚の発達段階にいる子どもたちにとって大切なこと」と説く。
調理を手伝いたい子どもは、自由に参加できる。みそも梅干しも手作り。暮らしの中に「食べること」が体験を通してしっかりと根付き、素食でも「おいしい給食」となる。
毎週火曜の朝は「にじみ絵」の時間だ。厚手の画用紙を水にぬらし、赤青黄の絵の具が混ざり合うときに現れる色を楽しむという。子どもたちは静かに席に着き、黙々と取り組む。大切なのは「作品」という結果を生み出すことではなく、その過程の体験。「静かに見守ることは、その子の意欲や自信を守り育てることにつながる」と記す。
2部で、自身の保育士になるまでの経験を振り返り、3部で現代の子育てや保育の意義などに言及する。「子どもたちは、周りにあるもの全てを無差別に自分の育ちに取り入れる。だからこそ、大人は真剣に向き合う必要がある」と強調する。
著者は1973年、仙台市生まれ。宮城学院女子短大卒。保育士として公立保育所などに勤務し、2008年に虹のこども園を開園した。
河北新報出版センター022(214)3811=1296円。