国境を越えたスクラム 山川徹著 中央公論新社

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国境を越えたスクラム

『国境を越えたスクラム』

著者
山川 徹 [著]
出版社
中央公論新社
ジャンル
芸術・生活/体育・スポーツ
ISBN
9784120052224
発売日
2019/08/08
価格
1,980円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

国境を越えたスクラム 山川徹著 中央公論新社

[レビュアー] 森健(ジャーナリスト)

 ラグビーの祭典、ワールドカップ日本大会が始まった。今回の代表選手31人のうち海外出身選手は15人。ラグビーは3年以上継続して暮らしていれば、その国の代表選手となれる。

 ともすれば“助っ人ガイジン”と一時的なサポートと見られがちな彼らだが、彼らを追ったノンフィクションである本書を読むと、誰もが必死に国の壁を乗り越え、互いを理解しあい、一つになっていった歩みだったことがわかる。

 外国人で最初に日本代表選手になったのは、1985年のトンガ出身のノフォムリ選手。当初はそろばんを学んで帰るのが目的だったが、大東文化大学でラグビーを始めた。日本独特の上下関係に違和感を覚え、下級生をかばい激高したこともあった。代表に選ばれると「この国の人たちは私を信頼してくれている」と全力を傾け、そんな姿勢が日本選手を刺激した。

 14歳で来日し、高校、大学、社会人と活躍する中で留学生への道を切り拓(ひら)いたのが、ニュージーランド出身のニールソン武蓮傳。若い頃はガイジンと指さされる嫌な思いもした。だがきつい練習もサボらずに打ち込むことで、周囲も一目置くように。そして、一緒にやってきた仲間がいるから「桜のジャージを着たい」という気持ちに結実していった。

 本書の著者も高校、大学でラグビーを経験し、随所に自身が見聞きしてきた話も配される。80年代から現在までのラグビーを巡る変化が実感的に反映されているのも納得感がある。

 なにより本書で描かれるのは、国ではなく人同士の信頼関係だ。外国人と日本人という国籍の壁を越え、互いに寛容に相手を受け入れていく。「One for all, All for one」という言葉はラグビーでよく使われるが、ラグビーに詳しくなくとも、本書を読むと、選手らの培ってきた信頼に、熱い感慨を抱くだろう。いま多くの外国人がやってきているわが国にあって大事なものが描かれているように思う。

読売新聞
2019年9月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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