そっとページをめくる 野矢茂樹著

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そっとページをめくる

『そっとページをめくる』

著者
野矢 茂樹 [著]
出版社
岩波書店
ジャンル
哲学・宗教・心理学/哲学
ISBN
9784000237406
発売日
2019/07/26
価格
2,090円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

そっとページをめくる 野矢茂樹著

[レビュアー] 鈴木洋仁(社会学者・東洋大研究助手)

 本を読むって、難しいから楽しい。そう著者は教える。

 名著『新版 論理トレーニング』(産業図書)で知られ、哲学が専門の著者は、本の差し出す声や核心をとらえる。前半は新聞掲載書評で、後半は書き下ろしを中心に、他者の本だけではなく、自らの編著まで広く深く読む作法の手ほどきをしてくれる。

 土偶からマンガまで多様な本を書評する本書について、旅行記のようだ、と書中で自ら評している。それなのに、「真理を手っ取り早く教えてくれたりはしない」。読みは読者の勝手ではなく、練習を重ねてこそ楽しめるからだ。その一つ、立場ごとの意味や価値観=相貌(そうぼう)を捉える読み方を宮沢賢治で実践する。

 細部をたどたどしいほどに読み返し、料理のように本を味わう。その旨(うま)みについては「本を読んでもらおう」。

 たとえば哲学対話についての読書を通じて、考える自由をはじめ、さまざまな体感を得られる。そして、ものの見方を重層化させることによって、私たちは大人になる。

 読んだつもりになれる要約集でも、ガイドでもない。本を読む幸せに包まれている。 (岩波書店、1900円)

読売新聞
2019年9月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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