『自分の居場所はどこにある?』
- 著者
- 渡辺龍太 [著]
- 出版社
- CCCメディアハウス
- ジャンル
- 社会科学/社会科学総記
- ISBN
- 9784484192239
- 発売日
- 2019/08/01
- 価格
- 1,540円(税込)
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SNSもリアルも。居場所づくりに必要なのは「行動力」ではなく「行動量」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
「居場所がない」と感じる瞬間は、誰にでもあるもの。
『自分の居場所はどこにある? SNSでもリアルでも「最高のつながり」の作り方』(渡辺龍太 著、CCCメディアハウス)の著者はそのことについて、「集団内での自分の役割がわからず、とるべき行動が思いつかない状態に陥ったときに『居場所がない』ということが発生する」のだと記しています。
また、そうした悩みを解決してくれるのはコミュニケーション能力だともいいます。
居場所には数人の人間関係からなる「ミクロな居場所」と、社会的地位に相当する「マクロな居場所」があり、どちらの居場所を確保するうえでもコミュニケーション能力が求められるということです。
そこで本書では、著者が習得した「居場所のつくり方」を公開しているわけです。
きょうはそのなかから、第3章「SNS、インターネットでの居場所のつくり方」に注目してみたいと思います。
ネットの居場所は、ミクロの居場所の一種
ビジネスでもプライベートでも、フェイスブック、ツイッター、インスタグラム、LINEなどのSNSを使っている方は多いことでしょう。
しかし、SNSのなかで心地よい居場所を見つけている人はそれほど多くないだろうと著者は指摘しています。
そもそも、SNSが居場所になりうるのかという疑問が浮上してもおかしくないかもしれません。しかしそれらの多くは、数十人規模の人間同士のコミュニケーションのうえに成り立っているもの。
つまりミクロな居場所の一種なので、会社、学校、バー、習い事の教室など、人間が集まる箱のひとつでしかないわけです。
ですから、SNSで居場所を絶対見つけなくてはいけないわけではなく、SNSを通じた居場所づくりを意識しすぎるのはよくありません。
SNSもリアルな人間がいてこそであり、人間関係であることには何ら変わりがないからです。(106~107ページより)
つまり、そこで居場所を見つけ、それを受け入れるという、リアルな人間関係と同じスタンスでいいという考え方です。(106ページより)
SNSの人間関係における錯覚
SNSを利用していると、自分の投稿にコメントがつかないことで思い悩んだり、傷つきがち。そんなときには、まずは自分のリアルな日常を思い返してみるといいそうです。
すると、わかることがあります。普段の生活においても、周囲が常に自分に関心を持っているわけではなく、自分も他の人にずっと関心を持っているわけではないということ。
たとえば会社の朝礼でのスピーチ後に、細かいコメントをしてくる人はほとんどいないのでは?
あるいは職場や学校でゴミの捨て方などのアナウンスがあったとき、それに対して大きな声を出してリアクションする人もいないはずです。
いわば、多くの人は「聞いておしまい」だということ。なんの反応をしなかったとしても認識しているわけで、それはSNSでのつぶやきも同じ。
また、SNSにおいて反応があるコメントには特徴があります。それは激しい共感がある、もしくは逆に激しく同意できない場合です。
または、質問を投げかけている投稿には、コメントが増える傾向があります。(109ページより)
普段、コメントがつかない人が書き込む情報は、そのいずれの方向にも触れていないことが多いため、反応が少なくて当然だということ。
だからこそ、「SNSでは反応があれば珍しい」という程度に考え、むしろ反応がないのが普通だと考えておくべきだというのです。(107ページより)
古くからの友だちと仲よくする
SNSで昔からの友だちとつながってはいても、そこに居場所がないと感じている方もいらっしゃるはず。
それは、リアルな人間関係であれば、どう交流すべきかがわかっても、インターネット経由だと、どうしたらいいのかがわからなくなってしまうから。
居場所がないという感覚は、「集団のなかで自分の役割がわからなくなり、取るべき行動が思いつかない状態」。つまりSNSで居場所がないと感じる人は、「役割」の認識と「行動量」が足りていないのだそうです。
では、どのような行動をすべきなのでしょうか?
著者はそのことを考えるために、既存の友人との人間関係を考えてみることを勧めています。
まず重要なポイントは、こちらが感じているようなことは、多くの人も同じように感じているものだということ。
なんとなく古くからの友達とつながっているけど、その場に居場所がないと思うのなら、まずは自分の行動量を増やさなければなりません。
つまり漫然と悩んでいるのではなく、自分から声をかけることです。(110ページより)
なお必要なのは「行動力」ではなく、「行動量」。特別な力が求められるのではなく、実際に動くかどうかに意味があるということだそうです。(109ページより)
「行動量」の増やし方
だとすれば気になるのは、具体的にどういう行動をすればよいのかということ。この点について、著者は以下の5つを挙げています。
・ 常連化
・ 「友人」ハードルを下げる
・ リアクト(反応)
・ アクセプト(受け入れ)
・ コミュニケート(連絡)
(111ページより)
常連化とは、自分が居場所をつくりたいと思っているところに顔を出すこと。
リアルな世界と同様に、ネット上での居場所もそのコミュニティの他の常連さんの名前や性格をひととおり把握するくらいには顔を出すべきだということです。
次に重要なのが、「友人」の定義のハードルを下げること。リアルよりも顔が見えづらいネットでは、リアルのときよりも「友人」のハードルを下げ、お互いを友人として認識することが大切なのです。
そして他人のネットの書き込みなどに反応(リアクト)し、反論するのではなく受け入れる(アクセプト)べき。
自分が受け入れられない考えも受け入れなくてはならないということではなく、自分に感性が近いと思えて、本心で受け入れられる投稿に対してたくさん反応(リアクト)するということ。
そのうえで彼らに自分から情報を発信したり、実際に会うなどの連絡(コミュニケート)をすれば、それが「行動量」を増やすことになるわけです。
ここまでやれば、ネットのなかに居場所を見つけられるはず。
逆にいえば、ネットは相手の顔が見えないだけに、相手のこれくらいの量のギブをする覚悟がないと、居場所を見つけることは難しいのだそうです。(111ページより)
著者は、テレビ業界の個性の強い人々と仕事をしている放送作家。
誰と対立することもなく、むしろよい関係を構築して人脈を広げ、新たな仕事を開拓できているのは、日々を通じて培ってきたコミュニケーション能力のおかげだと自負しているそうです。
居場所がないという思いを抱いている方は、参考にしてみるといいかもしれません。
Photo: 印南敦史
Source: CCCメディアハウス