中国に追い抜かれ韓国と喧嘩する斜陽の国がこれ以上沈没しないように

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この国のたたみ方

『この国のたたみ方』

著者
佐々木 信夫 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784106108297
発売日
2019/09/14
価格
836円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「道州制」復活!  令和の『平成維新』

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 皇居の周りに出てきた田舎モンが舵を取るこの国で田舎のことが思い出されるのは、カネが余ったときかカネに詰まったとき。1億バラまきのふるさと創生はバブル末期だったし、特区バラまきの地方創生は国が借金漬けになっての話です。

 同じことは道州制についても言えて、景気絶頂期に出た大前研一の『平成維新』でブームになった後シボんでたのが、ニッポンが尾羽打ち枯らしたここ何年か、また目に耳に入ってくる。

 そういうタイミングで世に出た『この国のたたみ方』だもの、道州制を推す書ではあっても、30年前の『維新』とはあれこれ違う。世界2位の経済大国がもっと伸びていくにはと、まだ坂の上の雲を見上げていたのが『維新』なら、中国に追い抜かれ韓国と子供の喧嘩やってるような斜陽の国がこれ以上沈没しないようにと、坂の下の糞まで見通しているのが『たたみ方』。

 もひとつ大きな差は、大前がエンジニア出身のコンサルタントだったのに対して、著者の佐々木信夫は行政学者で都庁にも16年勤務した行政のプロであること。右肩上がりの頂点だった平成元年に門外漢の合理主義者が、勝ち続けるために唱えた道州制を、右肩下がりの果ての令和元年に実務経験ありの専門家が、負け続けないために説く。

 現状の先で待つのは、いずれ人口が政令市を下回る県さえ出てくる袋小路。『たたみ方』というタイトルにも込められた危機感はまず、皇居の周りに犇めく田舎モンに共有してもらわないと。

新潮社 週刊新潮
2019年10月3日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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