既にプロデビューした作家の再挑戦を後押しする講談社「リデビュー小説賞」〈トヨザキ社長のヤツザキ文学賞〉
レビュー
『カラマーゾフの妹』
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『ノワールをまとう女』
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“再挑戦”後押しの心意気やよし! 講談社 「リデビュー小説賞」
[レビュアー] 豊崎由美(書評家・ライター)
出版の世界も厳しいもので、新人賞を受賞してデビューしたはいいけれど、目立った活躍を見せられないまま姿を消してしまう(もしくは、消されてしまう)作家は大勢いる、いた。新人賞どころか、もっと大きな賞の受賞経験がある作家ですら、業界からいなくなってしまうケースもある。
そんな中、募集要項に「プロアマを問わない」とある、日本推理作家協会主催の江戸川乱歩賞は、一度活躍の場を失った作家が再注目される新人賞としてよく知られている。
そのケースとして、一九九五年にデビューした高野史緒が「カラマーゾフの兄妹」(書籍化の際『カラマーゾフの妹』と改題)で受賞した第五十八回(二○一二年)が有名だが、今年、「NOIRを纏う彼女」(『ノワールをまとう女』に改題)で受賞した神護かずみも再デビュー組。おまけに歴代最年長受賞(五十八歳)で、デビュー以来雌伏二十三年というから、今後の健筆を祈るばかりだ。
さて、せっかくデビューしたのになにゆえ活躍できないかといえば、理由は大きく分けて三つある。(1)本人に継続して書き続けられる力がなかった、(2)出版社や編集者に新人を育成できる体力や能力がなかった、(3)長引く出版不況。
(1)はともかく、(2)と(3)の問題解決のために立ち上がったのが講談社だ。「どうしても新人作家さんや、一部の大御所作家さんが中心になってしまう今の時代だからこそ、私たちは、すでにプロとしてデビューされた方で、新しく活躍するフィールドを求める方に限定した賞を創設したいと思います。そして、もっと評価されるべき才能の再デビューを、講談社が全力をあげてプロデュースをさせてほしいのです」と謳った、エンターテインメント作品を対象とする「講談社 NOVEL DAYS リデビュー小説賞」を新設したのだ。
四百作近い応募作の中から、富良野馨「辺獄のパンドラ」をはじめ六作を第一回受賞作として発表。賞金は出ないものの、今後、出版&宣伝に力を入れていくとのこと。再挑戦の後押しをするという心意気やよし。今後の展開を見守っていきたい。