『虫の文学誌』奥本大三郎著
[レビュアー] 産経新聞社
フランス文学者の著者が、古今東西の文学の中から人と虫との関わりを探ったエッセー。
日本では虫を飼い、虫の音を鑑賞する文化があり、いにしえより虫を詠んだ和歌や俳句が数多くつくられた。「日本書紀」に登場するトンボは、めでたい虫として愛され、尊ばれてきた。だが、西洋では「不吉な恐ろしい虫、忌むべき虫として扱われている」と。
著者は「日本の花鳥風月の文化、芸術というものは、虫や、花を、接写レンズのような目で見るところから起こっているわけだが、西欧世界にはそれがない」と記す。虫の奥深さとともに文化の多様性を知る一冊。(小学館・3700円+税)